インタビュー
適正で安心できる抗菌・防カビ加工製品の普及を目指す
2022年8月2日
本日は、様々な抗菌製品に表示されているのを見かける「SIAAマーク」の認証機関である一般社団法人抗菌製品技術協議会(以下SIAA)の専務理事平沼 進様にインタビューさせていただきました。
プロフィール
SIAA様は、1984年頃から出始めた、銀を使った抗菌剤の安全性と効果の基準を作り、適正で安心できる抗菌加工製品の普及を目的として93年頃から活動を開始。抗菌剤および抗菌加工製品のメーカー、抗菌試験機関が集まり98年に設立されました。業界だけでなく、消費者、専門家、行政などの幅広い意見を聞きながら、抗菌加工製品に求められる品質や安全性に関するルールを整備し、そのルールに適合した製品に対して、SIAAマークの表示を認証している団体です。
一般社団法人 抗菌製品技術協議会東京都渋谷区代々木2-11-14 NKビル5階
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本日はよろしくお願いします。
まずはSIAA様の設立の経緯についてお聞かせください。
平沼
以前、抗菌剤というと、世界有数の総合化学メーカーが作る有機物や薬品系の抗菌剤が主流でした。
1984年頃に、銀を使った抗菌剤が市場に登場してきました。実は銀は安全性が高く、普段我々が口にする仁丹やケーキなどに含まれる食品添加物だったのです。それに殺菌力があることが発見され、抗菌剤として利用されるようになりました。そうすると「本当に抗菌作用があるのか?」「菌に効くということは、実は人体にも害があるのではないか?」と疑問の声が出てきました。
そこで私どもは安全性と効果の基準を独自に定め、その基準にマッチしたものに対してSIAAマークの表示をし、安心・安全な抗菌加工製品を提供する目的で、団体として設立されました。
現在加盟している会員数はどのくらいですか?
平沼1998年の設立同時は会員数104社でしたが、2020年3月時点では337社となりました。この時点で設立から22年間たちましたが、220社ほど増えたことになります。その後コロナの影響もあり、抗菌に対する認知度も上がったことで大幅に会員数も増え、現在では、もうすぐ1,000社にも届きそうな勢いです。
企業ブランドの信頼性を保証するSIAAマーク
SIAAマークは各企業ではどのように活用されていますか?
平沼日本には、抗菌や防カビ、ウィルスに対して法律的基準がありません。ですからこのSIAAマークがあれば、きちんとした効果と安全性基準が確認されているという証明になります。例えば会員の量販店様は、プライベートブランドの抗菌加工製品に関しては、プライベートブランドのマークとSIAAマークを並べて表示しています。量販店様は、プライベートブランド製品に関しては、単に抗菌製品というだけではなく、製造部門を担う協力会社に対しても、SIAAマークの基準のクリアをするようにと徹底しています。そうすることで、消費者に対して製品の安心安全を保障しています。
抗菌に対する認証機関は他にも存在するのですか?
平沼私どもの他にあと二つあります。一つは繊維関係の繊維評価技術協議会様でSEKマークを付けています。こちらは私どもよりも前に設立されており、私どもと連携をしております。スーパーなどで販売されている靴下や肌着、タオルなどに、こちらのマークが入っているものがあるかと思います。もう一つは光触媒工業会様です。光を当てると抗菌性が出る製品について認証していますが、最近では普通の可視光でも抗菌効果が出るようなものもあり、それらについて認証を行っている機関です。
一般製品と繊維製品に分かれている理由としては、製品の選定基準や検査の方法が違うということですか?
平沼繊維製品はSEKマーク、それ以外はSIAAマークというのが基本です。
稀にどちらの認証か迷うケースがあります。繊維の試験法で可能なものはSEKマーク、不可能なものはSIAAマークに分けられると考えています。例えば繊維でできたテーブルクロス。こちらに抗菌剤を塗布するとします。テーブルクロスによっては撥水効果を持たせることで、水をはじき汚れが落ちやすい製品がありますが、この場合は撥水効果の影響で繊維の試験法を行えない場合があります。その際には我々の試験法を経てSIAAマークで対応することがあります。
但し、ひとつの製品で両方のマークを登録するのは、お断りするようにしており、どちらか選んでもらうようにしています。ただ1つの製品で両方認証が取得されることもあります。その場合にはカタログの同じページに2つの表記はしないようにしていただいております。これは、消費者を混乱させることがないようという配慮からです。
コロナ禍での高まるSIAAマーク認証の必要性
先ほどコロナ禍の影響で会員数が増えたというお話がありましたが、どのような業種が増えましたか?
平沼はい。 特に多いのが印刷会社です。カタログ、封筒、ハガキといった一般的な紙製品。またレストランのメニュー、マスクケースやクリアファイルなどにも抗菌加工を施すことが多くなっていることが理由です。次に多いのが建材関係です。例えば床材、壁材などを製造している会社や、マンションやハウスメーカーです。3番目は、海外の企業です。元々多かったのは中国、韓国、台湾ですが、中国の会員は1.5倍ぐらいに増えているかもしれません。
抗ウィルスのマークもコロナ禍になり、かなり増えてきたと聞いていますが。
平沼そうです。
実は抗菌マークが始まったのが2000年です。防カビは2014年ぐらいです。私どもが抗ウィルスの認証を始めたのが2019年でした。
当初はあまり認証の数字が伸びませんでしたが、コロナ禍になり需要はかなり増えております。試験期間も、今までは依頼したら1ヵ月から遅くとも2ヵ月だったところが、ここ1年、半年から1年後になってしまうという話も聞いております。
今後の展望をお聞かせください。
平沼私どもの重点項目は三つあります。
一つは既存のSIAAマークを普及させることです。SIAA抗菌、SIAA、抗ウィルスSIAAの関係性を、俗にいうB to B to Cの関係にして、一般の方に知ってもらうことです。現在、このSIAAマークについて、一般の方が見て分かるような動画を作成中です。例えばこの動画を住宅展示場のモデルルームで流してもらう。そうすることで、この家に使われている抗菌材がこのSIAAマークだと理解していただけるようになります。
二つめは新たな試みとして、新しい認証を作ることです。現在、抗菌、防カビ、ウィルスを展開していますが、第4弾として、バイオフィルムの取り扱いを検討しています。簡単にいうと、ぬめりに対する基準です。お風呂場や台所などの水回りのプラスチック製品はぬめりが出てきます。これをバイオフィルムSIAAマーク、ぬめりSIAAマークのように認証して、ぬめりがつくのが遅くなるような基準を設けたいと考えています。
三つ目はグローバル展開です。現在、韓国、中国にも抗菌認証団体があります。今後2団体含めアジア諸国を中心に私どもの認証システムを広めていきたいと考えております。
本日はありがとうございました。
インタビューを終えて
インタビュー中、コロナ禍で会員数が大幅に増えている一方で、消費者に対するSIAAマークの認知を高めたいというお話を繰り返しされていたのが印象的でした。コロナウイルスが社会に大きな影響を与えていなければ、私自身も気にすることはなかったかもしれません。さまざまな抗菌製品が出回る中、第三者としての認証機関の役割は大きいと感じます。消費者が製品を選ぶ際の安心の目印として、SIAAマークがもっと認知されることを願います。