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企業で取り組むべき災害対策とBCPについて

企業で取り組むべき災害対策とBCPについて

日本は自然災害の多い国です。いつどこで起こるかわからない大地震をはじめ、強力化する台風や豪雨による大規模な風水害が発生しており、多大な被害を受ける企業や施設も少なくありません。事業を行っていくうえで、どのような対策をとるべきなのか。 策定・運用が急がれる「BCP:Business Continuity Plan(事業継続計画)」と合わせて、企業における防災・減災対策は今や必要不可欠。企業は従業員や顧客の生命の安全確保や、被害の最小化に備えて、さまざまな取り組みが求められます。

目次

  1. 1 - 地域別の自然災害の傾向と災害対策
  2. 地域別の自然災害の傾向
  3. 地域ごとに必要な災害対策
  4. 2 - 企業に求められる災害対策とは
  5. 災害対策で必要なこと
  6. 「防災」と「BCP(事業継続計画)」
  7. 3 - BCP策定の取り組み方について
  8. BCP策定の手順
  9. BCP策定におけるポイント
  10. 注目されているBCPの考え方
  11. 4 - まとめ

1 - 地域別の自然災害の傾向と災害対策

「災害列島」と呼ばれるほど自然災害の被害を受けやすい日本。地震や火山活動が起こりやすい立地であることはいうまでもありません。日本を取り巻く気象条件も災害の多い理由です。山地や丘陵、河川、沿岸部の多い日本の地形も頻発する水害・土砂災害の原因とされています。しかし、実は地域差が大きく、企業における自然災害への対策も地域別に考える必要があります。大規模地震の発生確率や災害ハザードマップの確認、危険な箇所のチェックなどもふまえて、事業所や施設周辺の地域別傾向を認識しておきましょう。

地域別の自然災害の傾向

日本を襲う自然災害の傾向について、10の地方に分けて検証してみました。地震の発生確率は、2021年1月に政府の地震調査委員会が発表した「長期評価による地震発生確率値の更新」を参考にしています。また、その他の災害については、ここ数年の被害情報をもとにまとめています。

北海道地方
北海道全域
道東沖にある千島海溝で起きる大規模な地震の発生確率が高まっています。津波被害も注意が必要です。これまで比較的台風被害が少ない地域でしたが、近年は台風や発達した低気圧による風水害が多く発生しています。また、警戒レベルにある活火山や冬の暴風雪被害にも警戒が必要です。
東北地方
青森県・岩手県・秋田県・宮城県・山形県・福島県
2011年の東日本大震災以降もたびたび地震が発生しています。今後も三陸沖や宮城沖、福島沖でM7~8程度の海溝型地震の発生確率が高まっており、津波の発生にも警戒が必要です。一方、近年台風や豪雨による河川氾濫、土砂災害などの被害も増加傾向にあり、冬の大雪被害とともに懸念されています。
関東地方
茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県
南関東を中心とした地域では、M7クラスの直下型地震の発生確率が高いと予測されており、相模トラフ沿いの海溝型地震と合わせて注意が必要です。また、昨今は毎年のように台風や記録的な豪雨が各地で甚大な被害をもたらしており、長期間停電や断水などのライフラインに支障をきたす被害も起きています。北関東を中心に落雷や竜巻の発生にも警戒が必要です。
北陸地方
新潟県・富山県・石川県・福井県
日本海側で地震の多発地帯といわれる新潟をはじめ、内陸や日本海沿岸で起こる活断層型地震が起こる可能性が今後もあるとされています。台風や記録的な豪雨による河川の氾濫などによる被害も多発しています。2021年に起きた記録的な大雪のように冬の雪害対策も必要です。
東海・中部地方
静岡県・山梨県・長野県・愛知県・三重県・岐阜県
静岡の富士川河口断層帯、長野と岐阜にまたがる阿寺断層帯の活断層地震の発生が予測されています。駿河トラフで想定される海溝型の東海地震への警戒も必要とされています。位置的に台風が上陸する経路にある東海地方は風水害を受けやすい地域でもあります。富士山の噴火にも警戒が必要です。
近畿地方
滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県
阪神・淡路大震災や大阪府北部地震の例を挙げるまでもなく、直下型の地震を引き起こす活断層が密集しており、海溝型の東南海地震、南海トラフ地震とともに地震の発生確率は高まっています。また、近年台風や豪雨による大きな被害が起きている地域が多く、河川の氾濫や浸水被害、土砂災害、高潮災害にも注意が必要です。
中国地方
鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県
比較的地震の発生が少ない地域といわれていますが、広島の沖合の断層帯の地震発生確率が高まっています。また、険しい山地が多く地質が弱いといわれるこの地域は、近年台風や集中豪雨による土砂災害が多発しており、山裾が宅地化された地域では常に注意が必要とされます。
四国地方
徳島県・香川県・愛媛県・高知県
愛媛の中央構造線断層帯、太平洋側の南海トラフ地震の発生確率が高まっています。特に海溝型の地震は大きな津波被害が想定されており沿岸部では備えが欠かせません。四国は台風の常襲地帯に位置しており、近年の記録的な豪雨とともに水害や土砂災害が懸念されています。
九州地方
福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県
2016年の熊本地震は2つの断層帯の活動によるものでしたが、引き続きこの地域の地震発生確率は高く、南海トラフ地震の被害想定地域も含まれています。九州は台風の上陸回数が多い地域ですが、2017年には九州北部豪雨が発生しており、堤防決壊や土砂災害を引き起こす台風や集中豪雨への警戒も怠ることができません。また、桜島をはじめ、警戒が必要な火山や海底火山にも備えが必要です。
沖縄地方
沖縄県
沖縄では本島よりも八重山諸島付近で発生する地震が多く、台湾をはじめ少し離れた地域で起きた地震による津波被害も懸念されます。位置的に台風の接近数は多く、速度の遅い台風が居座りがちなため大きな被害を受けることが少なくありません。発生率の高い竜巻にも注意が必要です。

地域ごとに必要な災害対策

地域ごとの傾向をふまえ、災害対策を講じることが重要ですが、ここでは地域特性に沿って予想される災害の対策について検証してみます。

都市部 建物や人口が集中している都市部は、さまざまな災害対策が施されていますが、大規模な地震など、ひとたび大きな災害が発生すれば被害が甚大になります。電気、ガス、水道などのライフラインや公共交通機関に影響が出て、基本的な生活が困難になることも想定しなければなりません。重要なのは、初動対応のために必要な災害発生後の正確な情報収集と発信。被害の発生を想定して予めハード、ソフトの総合的な対策を立てておきましょう。
沿岸域 沿岸部は津波、高潮といった水害が起こりやすい地域です。一瞬で人命や財産を奪う水害の危険から守るためにハザードマップを活用するなど、被害をイメージすることが大切。沿岸部に事業所や工場を構えている企業は事業継続のためのBCPや防災マニュアルの策定が必要不可欠です。
河川付近 記録的な大雨によって大量の水が流れ込み、河川が氾濫する被害が増えています。国や自治体による河川の改修や治水設備の整備の進捗状況をチェックし、水害ハザードマップを確認するなど、浸水の危険性を認識しましょう。そのうえで、安全を第一とした十分な事前対策が求められます。
山間部 山間部や傾斜地では地震や台風、集中豪雨などの影響で土砂災害が起こりやすくなります。地すべり、がけ崩れ、土石流などの被害を想定し、自治体のハザードマップを利用し、危険個所を確認しておきましょう。避難場所へ安全に避難できる経路も把握しておく必要があります。地域によっては雪害対策も欠かせません。

2 - 企業に求められる災害対策とは

災害対策で必要なこと

防災・減災を前提とした企業の災害対策としてどんなことが必要か。さまざまな災害を想定して以下のように考えていくとよいでしょう。
・地震に備えて機械や機器類、壁面収納、デスク周りなどの転倒防止対策
・被災後の避難生活を想定した災害備蓄品の準備
・避難誘導、初期消火、応急救護などを含む定期的な防災訓練の実施
・被害想定区域や避難場所、避難経路などを示したハザードマップの確認
・災害時にとるべき行動を周知させるための防災マニュアルの作成
・重要データのバックアップと代替可能なバックアップシステムの整備
・災害時、従業員や顧客の安否確認の体制の構築
・障がい者や高齢者、外国人など、災害時要援護者への支援意識の啓発と環境整備

「防災」と「BCP(事業継続計画)」

企業に求められる災害対策には、「防災」とは別に「BCP:Business Continuity Plan(事業継続計画)」が推進されています。「防災」は災害による被害を未然に防ぐための対策のことであり、被害の拡大を防止するものです。一方、「BCP」は災害や事故などのトラブルが発生した場合、企業が被害を最小限に留め、事業の継続、早期復旧を図ることを目的とした計画です。防災の対象は自社の経営資源ですが、BCPが守る対象には、サプライチェーン(供給網)のインフラなど社外の経営資源も含まれます。また、BCPを準備することで、顧客や株主から信頼を得やすくなり、さまざまな面で企業価値を高めることにつながります。
2024年4月からは、介護サービス業においてBCP策定が義務化されるなど、BCPの重要性は年々高まっています。

3 - BCP策定の取り組み方について

BCP策定の手順

事業継続に目的とするBCPはどのような手順で検討していけばよいのか、神奈川県の『BCP作成のすすめ(かながわ版)』では検討の流れとして以下が掲げられています。

① 事業継続のための方針の検討
② 防災に必要な取り組み内容の検討
③ 事業継続のための現状把握と必要な取り組み内容の検討
◆被害の想定 ◆重要な事業の選定 ◆目標復旧時間の決定 ◆代替え経営資源の準備
④ 事業継続計画の周知・徹底方法の検討
⑤ 事業継続計画の維持・見直し方法の検討
⑥ 事業継続計画の文書化
◆事業継続計画書の作成 ◆初動・復旧・事業継続のための手順の文書化

BCP策定の手順は、他にも内閣府や全国の各自治体で、企業向けのBCP作成ガイドラインや参考資料が公開されています。

BCP策定におけるポイント

防災をふまえたBCPの策定において考慮すべきポイントは、以下の通りです。
・策定の目的と意義を明確にする。
・組織体制や指揮命令系統を明確にする。
・想定されるリスクを洗い出し、具体的な施策を決定する。
・BCPの周知・共有、防災訓練の実施などによる意識づけを図るBCM(Business Continuity Management=事業継続マネジメント)を構築する。
・定期的な見直しとアップデートを行い、精度を高める。
BCPは継続的に改善していくことにより、徐々に完璧に近い計画に仕上がっていくとされています。

注目されているBCPの考え方

BCPの取り組みにおいては、近年さまざまな考え方が重要になってきています。その1つが「タイムライン(防災行動計画)」の作成です。タイムラインは、災害による被害を想定して防災行動などを予め時系列に整理した計画のことで、自治体や地域住民、企業が連携したタイムラインを作成することが防災・減災に繋がります。
一方、有事の際の事業継続・復旧の対応力を表す「レジリエンス」という概念も注目されています。政府は企業や団体における事業継続の取り組みを広げるため、レジリエンスに努める企業を認証する制度をつくり、BCPのレベルアップを図っています。
また、昨今のBCPの取り組みにおいては、社会的に信頼され、企業や社会の持続性を推進する「サステナビリティ」の考え方が重要です。企業は、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けて、サステナビリティ経営とESG(環境・社会・企業統治)の視点を持って、長期的な視点でステークホルダーとの関係を築くことが必要であり、単に防災や事業継続だけでなく、持続可能な社会の実現に向けた経営戦略としてのBCPへの取り組みも重要になりつつあります。

4 - まとめ

災害の多い日本で企業が取り組むべき対策について、「防災」と「BCP(事業継続計画)」の観点での基礎知識を紹介してきました。いつ襲われるかわからない災害に対して知識を高め共有していくことが大切です。
企業活動に影響をおよぼすさまざまなリスクに備えて、「転ばぬ先の杖」としての「防災」への取り組み、そして「BCP」の策定・運用をぜひご検討ください。

関連情報のご紹介

BCPのための映像・音響ソリューション
https://jkpi.jvckenwood.com/solution/bcp/

災害発生時の防災拠点「豊島区立としまみどりの防災公園」インタビュー記事
https://jkpi.jvckenwood.com/mediasite/005/


編集:株式会社JVCケンウッド・公共産業システム マーケティング担当(2022年11月17日)

<参考資料・出典>
神奈川県ホームページより
「BCP作成のすすめ(かながわ版)」開示資料より

※本資料は、公開掲載時点での情報であり、内容の完全性・正確性を保証するものではありません。
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