コラム
監視カメラは人手不足解消の鍵になる?生産人口縮小社会を生き抜く新しい戦略
2023年5月24日
我が国は高度経済成長期を経て世界有数の経済大国に成長しましたが、バブル崩壊後は失速し、「失われた20年」と呼ばれるほどの低成長期を経験しました。加えて、今後の日本経済を占う上で懸念されているのが少子高齢化と生産人口の減少です。
デジタル化や新しい働き方の広がりは、人手不足を補い、日本経済の活性化につながると期待されています。コロナ禍やエネルギー危機、物価上昇などのリスクに直面する今こそ、業務効率化や生産性向上につながるツールの導入を進めることが求められています。
目次
1 - 深刻化する人手不足
足踏みする日本経済
かつては世界第2位の経済大国といわれていた日本経済ですが、バブル崩壊後から現在に至る約20年にわたり、長い景気低迷期を経験しました。実質GDP(国内総生産)は徐々に増加傾向を示しているものの、成長基調を示すまでの勢いには至っていません。
そこに追い打ちをかけたのが、2020年以降に猛威を振るった新型コロナウイルスの感染拡大です。日本のみならず世界規模で社会経済活動の縮小が見られました。人によるサービスの提供が求められる飲食業や観光業などが営業自粛に追い込まれたり、製造現場のサプライチェーンが寸断されたりするなど、幅広い業種が新型コロナウイルスによる影響に直面する事態となりました。
成長の鈍化と市場の縮小、そして新型コロナウイルスの感染拡大もあいまって、日本経済はいまだ苦しい状況を抜けられずにいます。
厳しい経営環境が続く見込み
こうした状況をさらに悪化させる恐れがあるのが、2022年3月からのロシアによるウクライナへの軍事侵攻です。先進各国は大規模な経済制裁を実施しており、世界経済の構造も大きく変化しています。ロシアは石油や天然ガスなどのエネルギーを、特に欧州向けに展開していました。一方のウクライナは、小麦を始めとする世界有数の穀物輸出国です。この度のウクライナ危機は世界的なエネルギー価格の高騰や食糧供給の不安定化を招いています。
そのショックは欧州のみならず全世界に及んでおり、日本も例外ではありません。景気の後退局面(スタグネーション)における物価上昇(インフレーション)を合わせた、「悪いインフレ」を意味する「スタグフレーション」に直面しているとの指摘もあります。新型コロナウイルスによる傷が癒えない中で、世界経済のゆくえにも大きな影を落としています。
少子高齢化と生産人口の減少
日本で最初に新型コロナウイルスの感染が確認されてから約3年が経ちました。生活や企業活動への影響が続く一方で、緊急事態宣言の解除や輸出入の回復などにより、少しずつですが経済活動を再開させる企業が増えてきました。
そのような中、これまでも指摘されていましたが、改めて注目されているのが人手不足の問題です。生産活動を活発化しようとしても人材が集まらないケースがあり、事業再開がスムーズに進まないことが懸念されています。
この人手不足の背景として指摘されるものに、人口の減少と少子高齢化の進展があります。特に注目したいのが15歳から64歳の、1995年をピークに減少し続けています。今後は働く人が減り続け、市場の縮小は避けられない側面がありますが、それでも日本経済が活力を維持し続けるためには、多様な働き方の導入を進めて、女性や高齢者の労働市場への参画や業務の効率化を進め、生産性の向上を図ることが必要です。
2 - 管理者も足りなくなる? 日本経済を支える製造業もピンチに!
慢性的な人手不足に直面する業界
新型コロナウイルスの感染拡大前から、建設業や運輸業、介護・福祉業などは慢性的な人手不足状況にあります。その背景には、求人はあったとしても、企業側が求める人材と求職者のニーズが合わないケースが多いといわれています。いわゆる「3K」(きつい・汚い・危険を表す造語)といわれる業界では、若い世代の採用が進まず、人手不足に加えて労働者の高齢化も課題となっています。
人手不足状況が続くと、残業時間の増加や休暇取得の減少、また能力開発の機会も減少するなど、働く人の意欲の低下や離職率の増加につながるリスクがあるといわれています。こうした状況に対し、たとえば建設業を所管する国土交通省では「新3K」と称する取り組みを推奨しています。これは「給与・休暇・希望」の頭文字を取るもので、働きやすい環境づくりを進め、新たに建設業で働く人材を増やそうとする狙いがあります。特に「希望」に含めている要素には、デジタル技術の導入や機械化の促進などが含まれています。
機械化が進む製造業にも人手不足の波
人手不足に悩む業界は、上記のような業界に限ったことではありません。特に新型コロナウイルスの感染拡大後は、安定的な事業展開が見込めないという理由から、サービス業や製造業でも人手不足が深刻化しているといわれています。
このうち、日本経済を支えてきた製造業の就業者が過去20年間で157万人減少、特に若年の就業者数は同じ期間で121万人減少といわれています(2022年版ものづくり白書)。製造業ではこれまで機械化による業務効率化が進められてきましたが、それでも新しい人材の獲得が厳しい背景には、製造業が景気の動向に左右されやすいことや、不景気が続く中で新規雇用が進まず労働者の高齢化が進んでいることなどがあると考えられます。技能を持つ人から若手への継承や世代交代がうまく進められなければ、管理者も含めて人材不足はより深刻になるでしょう。
2023年も続く物価上昇と賃上げ要請
本来ならば、人手不足の状況では雇用確保機運が高まり賃金が上昇、さらにそれが価格に転嫁されてインフレも誘発し、政府の目標である毎年3%の物価上昇率を実現することになる、といったシナリオが描ければよいところなのですが、現実には賃上げには至らず、2022年以降の極端なインフレに戸惑っている企業や国民が多いのではないでしょうか。企業側からは市場の不透明感から賃上げに消極的な姿が伺えますし、また長く続いたデフレは価格転嫁をしにくい風潮を作り出してしまっているかもしれません。単純に人手不足だから賃金が上がる、ということでもないようです。
政府や経団連などの経済団体は、こうした状況を受けて企業に対し強く賃上げを求めています。給与を増やす企業も少しずつ増えていますが、多くの企業はその物価上昇の勢いに追いつけていないのが実態だと考えられます。
3 - 期待されるデジタル技術・監視カメラの技術革新も進む
人手不足対策として期待されるデジタル技術
こうした人手不足状況への対策として期待されているのがデジタル化です。それまでアナログで対応していた領域でデジタル化が可能になれば、人に代わってデジタルが業務を遂行できるようになります。それにより業務が効率化され、企業全体の生産性も向上する可能性があります。またデジタルの活用により、テレワークの推進や副業・兼業の普及など、多様な働き方の導入が進めば、これまでさまざまな事情で働けなかった人を雇用したり、外部の有能な人材を効率的に活用したりすることも可能になるでしょう。
最近はDX(デジタル・トランスフォーメーション)を導入する企業も増えてきました。デジタルを活用して自社の課題解決を図りつつ、新たなビジネスモデルを構築するというものです。デジタル化、特にDXを進めるためには、それに対応する人材の育成も重要です。
技術の進化とともに改めて注目される監視カメラ
デジタル技術はさまざまな現場で活用が進んでいますが、人手不足の解消につながる技術として監視カメラへの注目が高まっています。
監視カメラは人やモノの動きを撮影したり、犯罪を抑制したりする目的で、さまざまな施設や店舗、また街の中などに設置されてきました。個人が自宅や駐車場などに設置したり、企業がオフィスや工場などに導入したりするケースが多くあります。
最近では、AI技術を搭載したカメラによる在庫管理や製造工程の異物感知ができるほか、カメラの機能を活用した入構管理や顔認証、文字検出など、機能がさらに拡大しています。また、感染症対策としては混雑度の把握や、熱を感知する機能があるカメラもあります。建設業や製造業のような現場仕事を始め、さまざまな業種で活用できます。
そして、画質の向上、大容量HDD搭載による録画・保存時間の拡大、映像レベル(カラー・白黒等)の選択肢、遠隔での操作性など、監視カメラに用いられる撮影や記録の技術は日々進化しています。
このように、監視カメラの技術は防犯や監視機能に加え、業務効率化や非接触対応など、さまざまなシーンで活用できるでしょう。
監視カメラはリスクマネジメントの観点からも効果的
監視カメラはほかにも、その機能を活用して豪雨や地震・津波などの自然災害、ダムの貯水率把握、高所や危険個所など、安全対策から人を常駐させることが難しい場所で威力を発揮します。また、オフィスや施設などでは社内の犯罪抑止や業務改善にも役立つと考えられます。
決して起こってほしくないことではありますが、近年、人手不足として取り上げられることの多い介護施設や保育所などで、入所者に対する虐待やネグレクト(責任の放棄)が話題になりました。こうした悲劇を避けるために、管理者不足の現場では監視カメラを活用して従業員の働き方チェックを行うことも大切ではないでしょうか。
4 - まとめ 監視カメラは人手不足に直面する企業の味方に
今回は昨今の日本経済の現状や、企業の人手不足状況についてご紹介するとともに、解決策のひとつとして監視カメラの機能についてもご紹介しました。
監視カメラというと防犯対策の印象が強いと思いますが、私たちの生活環境や職場などでさまざまな活用方法があります。公共・商業施設では、カメラを整備することで巡回配置の人数を減らすことができます。ハンズフリーで撮影が可能なウェアラブルカメラは作業効率を上げ、ドローンやロボットにカメラを付ければ業務の効率化や監視機能を強化できるなど、その活用範囲はさらに広がっています。最近では、危険な業務の多い建設現場での出来形管理や建造物の検査、遠隔臨場など、農業では圃場整備の測量や農場管理といった導入事例が増えています。
このように、監視カメラは私たちの日常、そして社会に欠かせない存在となりつつあります。これからさらなる労働人口の減少や高齢化を迎える日本においては、ますますニーズが高まっていくと予想されます。
株式会社JVCケンウッド・公共産業システムは、これまで映像、音響機器の製造販売を通し、お客様のニーズに即した業務用システムを提供してきました。こちらの記事で紹介した監視カメラのような新しい技術を活用して、働きやすい職場づくり、さらには安心・安全・快適で暮らしやすい社会をめざしていきたいと考えています。
編集:株式会社JVCケンウッド・公共産業システム マーケティング担当(2023年5月24日)
<参考資料・出典>
経済産業省「2022年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)」
厚生労働省「令和4年版厚生労働白書-社会保障を支える人材の確保-図表1-1-1 労働力人口・就業者数の推移」
内閣府「令和4年度 年次経済財政報告」
総務省「令和4年版 情報通信白書|生産年齢人口の減少」
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