レポート
デザイン性に優れた天井露出型スピーカー「SB-C106」シリーズ
2023年9月1日
近年、オフィスビルや商業施設、庁舎をはじめとする公共施設など、多くの建物で建築デザインを重視する傾向が強くなっています。この傾向に伴い、建物で使用される設備のひとつであり、非常放送や呼び出し放送、BGMなどの業務放送を行う「非常・業務放送用スピーカー」においても、音質や音圧などの機能・性能面だけでなく、見た目の美しさや建築意匠を邪魔しないようなデザインが、製品の要素として求められるようになっています。
本記事では、このような市場の背景や建築物のトレンドに基づき、「電気・音響性能の改善」と「意匠性に配慮」した天井露出型タイプの非常・業務放送用スピーカー「SB-C106」シリーズを紹介します。
目次
1 - 非常・業務放送用スピーカーとは
非常・業務放送用スピーカーの概要
非常・業務放送用スピーカーは、非常用放送設備の一部として、法令に定められた設置基準に基づいて設置されています。
非常用放送設備は、火災発生の確実な報知と的確な避難誘導を目的としており、一定以上の規模、収容人数の建物に対して、消防法により、設置が義務付けられています。
非常用放送設備として使用するスピーカーは、性能や耐久性など、消防法に基づく様々な技術基準を満たす必要があります。国の登録認定機関である日本消防検定協会による認定評価において高い品質と信頼性が認められた製品には、型式が付与され、認証マークが表示されています。
非常・業務放送用スピーカーの主用途は非常放送ですが、平常時は館内の呼び出し放送や報時チャイム、BGM放送など、業務放送用途として使用されています。 また、一般的な家庭用スピーカーは音質や原音の再現性が重視されますが、非常・業務放送用スピーカーでは明瞭度と信頼性が重視されます。さらに、平常時に音量が小さく絞られている場合でも、非常放送時には最大音量で放送するなど、非常時と平常時の切り替えができる必要があります。
非常・業務放送用スピーカーの種類
非常・業務放送用スピーカーは、さまざまな場所で使用されるため多くの種類があり、設置場所や環境に合わせて機器を選定します。
市場の区別なく、ほとんどの建物に設置されているのが、「天井埋込型スピーカー」です。天井ボードの裏に設置し、スピーカーパネルを室内に露出させて設置するタイプの製品です。パネルの種類が豊富で、様々な建物に合わせて設置できることから、広く一般的に使用されています。
「天井露出型スピーカー」は、天井の仕上げがコンクリートやデッキプレートといった場所や、テナントビルに入居する場合など、天井を開口できない環境でも設置が可能です。
その他、学校の教室でよく見られる「壁掛型スピーカー」、屋外で使用可能な「ソフトホーンスピーカー」などがあります。
2 - 建築トレンドの傾向とスピーカーへの要求
近年の建築トレンドとして、建築意匠の重視や災害時の安全性、コスト削減の要望が高まっています。この変化に合わせてスピーカーの要望も変化しています。
意匠の多様化
民間・公共を問わず意匠が多様化する中、設備に対しても建築意匠と調和するデザイン性が求められています。
例えば、製品に様々なカラーバリエーションや、小型かつ薄型な形状を要望されるケースが増えています。
天井環境の変化
また、スケルトン天井やルーバー天井の増加傾向もあります。スケルトン天井は、天井ボードを張らずに、躯体や空調の配管などがむき出しになっている天井で、ルーバー天井は、スケルトン天井にルーバー(細長い板)を等間隔に設置した天井です。これらの天井は、意匠性に加え災害時に天井ボードの落下による被害を軽減する点と、天井ボードがないことによる建築費用削減の点が評価され、近年増加傾向にあります。
これら2つの天井では、天井ボードを張った場合と比較してスピーカーの設置位置が高くなり音圧低下の恐れがあるため、十分な音量で放送できるよう高出力であることや、設置場所が暗く影になることが多いため、目立たない色であることの要望が増えています。
3 - 建築意匠に配慮したモノづくり
変化するニーズに応える製品開発
今回ご紹介する天井露出型スピーカー「SB-C106」シリーズの製品開発では、若手社員を中心としてプロジェクトを結成。建築トレンドからニーズを把握・顕在化するため、市場調査からスタートしました。
設計段階では、市場調査により汲み取った「非常照明と同化する寸法と形状」を目指して構想設計を行いました。また、非常時と平常時に求められる各要素の両立も重視。非常・業務放送用スピーカーは非常用放送設備の一部であり明瞭度や信頼性が不可欠ですが、平常時に業務放送用として利用されるため聞き取りやすいアナウンスと心地よいBGM放送を実現する音質も必要です。
試作と改良を重ね、製品開発の最終段階では、性能や耐久性のテストを行い、音量、音質、耐久性、耐環境性など、さまざまな要素を検証し、規格や基準に適合しているか、また製品の使い勝手などにもこだわり、製品の発売に至りました。
小型化と高出力化で多様な設置環境に対応
ルーバー天井に天井露出型スピーカーを設置する場合、従来のモデルではルーバー間に収まらず設置位置が高くなることがあり、設置環境により十分な音圧を確保できないケースもあったことから、スピーカーの小型化と高出力化が強く望まれていました。
そのような要望に応えるため「SB-C106」シリーズでは従来のモデルから小型化、業界最小※1の外径φ150mmを実現。これにより建築意匠に対し大きな主張をすることがなく、さまざまな設置空間とも調和します。
また、ルーバー間に収まりやすい寸法のため設置高さを低く設定することが可能で、ルーバーによる音圧低下の影響も受けにくくなっています。
※1:非常・業務用天井露出型スピーカーとして。2023年5月16日時点。当社調べ。
また、音圧が不足する環境に対応するため、従来モデルの定格入力1W/3Wに6Wを追加。6Wに切り替えを可能にしたことで、スケルトン天井など、設置位置が通常より高くなる場所でも、十分な音量で放送することができるようになりました。
また、小型化を実現しながらも非常放送に必要な周波数の音圧の確保と心地よいBGM放送を実現する音質の両立を目指しました。
スピーカーの特性上、特定の周波数の音圧を上げるようにスピーカーユニットを設計すると再生できる周波数範囲が狭くなります。このため、規定の音圧をクリアしたうえで幅広い周波数帯域を再生するためには、音圧と周波数帯域のバランスを取る必要があります。
スピーカーユニットは、口径や磁石の大きさ、コーン紙の形状等々の各部品が音圧や再生できる周波数を左右する要素となるため、あらゆる部分を調整してバランスを追求しました。
空間に調和する色とデザイン
非常・業務放送用スピーカーは、非常用照明や感知器などと一緒に取り付けられることが多いため、これらとのデザインの融合性が求められます。
本機では色とデザイン性にもこだわり、表面をマット系の仕上げとすることで、スピーカーを目立たなくしました。
開発当初、特に黒色は傷つきにくさや耐候性を重視して現在よりツヤがありましたが、市場調査を進める中で、「光が反射して目立ってしまう」「高級感が不足している」などの声をいただき、よりマット感を強調する方向で検討を重ねた結果、塗料の見直しにより、傷つきにくさ、耐候性と見栄えの両立を実現しました。
また、天井や壁、空調、照明にホワイト系が増えていることから、従来モデルで使用していたアイボリー系から、より空間に統一感が生まれるホワイト系の白色に変更しました。一方、黒色はルーバー天井やスケルトン天井でも目立ちにくい色で、木質系の天井とも相性が良く、屋内外を問わず使用できるモデルとして位置づけています。
4 - 幅広い設置場所に対応するラインアップ
防滴天井露出型スピーカー「SB-HC106」シリーズは、マンションの廊下や立体駐車場、軒下といった半屋外の環境にも設置できます。
防水構造には数々の工夫が凝らされており、まず、スイッチの接点を錆びから守るためにキャップが装着されています。
また、製品の隙間から水が入りにくくするだけでなく、水が入った場合の排水構造や抜けやすさも重視。通常型と筐体は同じですが、裏側の見えない部分に隙間が設けられ、水が抜けるようになっています。従来の製品では外観面に水を抜く穴を設けていましたが、新しい設計ではその穴をなくしてデザイン性を高めつつ、前面グリル部分から排水を実現しています。
また、本製品はスイッチボックスを使用して吊りボルトに取り付けることができ、ペンダントスピーカーとして利用することができます。
5 - まとめ
非常・業務放送用スピーカーは、万が一の火災発生時に建物内の人々に警報と避難誘導を行うための設備であり、建物を利用される方の「安心・安全」を守るために重要な役割を果たしています。
そして、「SB-C106」シリーズは基本的な性能や信頼性を重視するだけでなく、高い意匠性を持つ建物に使用した場合でも、空間意匠を損なわないようデザイン性にもこだわった製品です。
当社は、製品を通じて安心・安全と共に様々な場所で居心地の良い空間づくりに貢献し、今後も市場の変化やお客様の要望に応え、常に新しいモノづくりに取り組んでいきたいと考えています。
●写真は実機と異なる場合があります。
編集:株式会社JVCケンウッド・公共産業システム マーケティング担当(2023年8月30日)
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