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注目のバイオフィリックデザイン~自然を取り入れた空間デザインとは~

バイオフィリックデザイン

近年、環境意識の高まりに伴い、都市の中心やオフィスビルの中などで緑を目にする機会が増えています。中には鳥のさえずりや川のせせらぎが聞こえるような空間もあります。
こうした自然を感じる空間デザインは、「バイオフィリックデザイン」と呼ばれる考え方に基づいています。生産性向上の観点からも注目されているバイオフィリックデザインとは、どのようなものなのでしょうか。
本記事ではバイオフィリックデザインの考え方、その注目されている理由、および具体的な事例などについて紹介します。

目次

  1. 1 - バイオフィリックデザインとは
  2. 2 - バイオフィリックデザインがもたらす効果
  3. 幸福度の向上
  4. 生産性の向上
  5. 創造性の向上
  6. 3 - バイオフィリックデザインが必要とされる理由
  7. 4 - 都市空間におけるバイオフィリックデザインの事例
  8. 大手町の森(東京都千代田区)
  9. 二子玉川ライズ(東京都世田谷区)
  10. 5 - オフィス環境におけるバイオフィリックデザインの取り入れ方と事例
  11. 事例:Port Plus®(神奈川県横浜市)
  12. 6 - 「KooNe」で実現するバイオフィリックデザイン
  13. 導入事例:株式会社大林組 様
  14. 導入事例:株式会社遠藤照明 様
  15. 導入事例:旭化成株式会社 様
  16. 7 - まとめ

1 - バイオフィリックデザインとは

バイオフィリックデザインとは、植物などの自然を感じさせるモチーフを取り入れた空間デザインのことです。アメリカの生物学者エドワード・O・ウィルソンによって提唱された「バイオフィリア仮説」に基づいた考え方です。
バイオフィリアとは「バイオ(生命)」と「フィリア(愛好)」を組み合わせた造語で、人間が生物や自然に対して抱く愛好を意味します。バイオフィリア仮説によると、人間には生まれつき他の生物や自然とのつながりを求める欲求があり、自然に触れることで、心の安定や免疫力の向上などの効果が得られるとされています。
この考え方を空間デザインに取り入れたものが、バイオフィリックデザインです。具体例としては、「オフィス空間に緑や自然光を取り入れる」ことなどが挙げられ、近年では、健康経営やオフィスでの生産性向上の観点からも注目されています。

2 - バイオフィリックデザインがもたらす効果

バイオフィリックデザインがもたらす効果

バイオフィリックデザインによる効果としては、ストレスの軽減、集中力の向上、体調の改善、創造性の向上、幸福感の向上が期待されています。自然に触れることで、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が抑制され、免疫力が向上することがさまざまな研究で示されています。さらに、バイオフィリックデザインを取り入れた環境では、従業員の生産性が向上するという研究結果もあります。
職場における幸福とストレスに関する研究で著名なランカスター大学のケイリー・クーパー博士の調査によれば、バイオフィリックデザインによって従業員の幸福度が15%、生産性が6%、創造性が15%向上したとのことです。以下では、幸福度、生産性、創造性における効果について見ていきます。

幸福度の向上

幸福度を高めるには、ストレスの低減が重要です。自然と触れることで、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が抑制されるという研究結果が多数あり、バイオフィリックデザインの導入によってストレスが低減されると考えられます。また、ドーパミンやセロトニンといった幸福物質の分泌も促進されるため、幸福度の向上が期待できます。

生産性の向上

バイオフィリックデザインを導入すると、ストレスが軽減され、仕事への集中力が高まります。また、創造性の向上により問題解決能力も高まります。そのほか、健康が増進したり、仕事に対するモチベーションが向上したり、社内のコミュニケーションが活発になるため、結果的に生産性の向上が期待できます。

創造性の向上

ストレスは脳の創造的な機能を阻害するため、バイオフィリックデザインによってストレスを軽減すれば、創造性も向上すると考えられます。また、創造性にとって重要な集中力や注意力、記憶力などの認知機能を高めるだけでなく、心身をリラックスさせる効果もあるため、アイデアが浮かびやすい脳の状態を作り出すことができます。

3 - バイオフィリックデザインが必要とされる理由

バイオフィリックデザインが必要とされる理由

バイオフィリックデザインが注目を集めるのは、企業における働き方改革や健康経営の推進に有効と考えられているためです。働き方改革においては生産性の向上が不可欠であり、労働人口の減少が進む中で、従業員に長く働き続けてもらうためには、ウェルビーイングを実現する健康経営がますます重要になっています。
これまでは「生産性を上げる」といえば、DXなどの技術的なソリューションに注目が集まっていました。しかし、最近ではマインドフルネスなど、従業員の内面の安定を図ることで生産性を向上させようとするアプローチも増えています。
さらに、コロナ禍以降、人々のライフスタイルが変化し、自然とのつながりを求める人が増えたことも、バイオフィリックデザインの需要を高める要因となっています。

4 - 都市空間におけるバイオフィリックデザインの事例

都市空間におけるバイオフィリックデザインの事例

バイオフィリックデザインは、都市空間全体やオフィス環境での取り組みに活用されています。以下では、都市空間におけるバイオフィリックデザインの国内事例を2つ紹介します。

大手町の森(東京都千代田区)

大手町の森は、大手町タワーに隣接する人工の雑木林です。大手町タワーの敷地全体の約3分の1にあたる約3,600㎡の面積を占め、オフィス街の真ん中にある緑地として、ビジネスパーソンたちの憩いの場となっています。敷地内には約200本の樹木が植えられ、多様な動植物が息づく生態系を築き、「人が心地よく、生き物が棲みやすい、自然・郷土の森」を再現しています。自然を身近に感じながらビジネスに取り組める、バイオフィリックデザインの好例として注目されています。

二子玉川ライズ(東京都世田谷区)

二子玉川ライズは、「『水と緑と光』の豊かな自然環境と調和した街づくり」をテーマにした複合施設です。ショッピンセンターをはじめ、オフィスビルやタワーマンションなどで構成されています。屋上緑化によって整備された約6,000㎡のルーフガーデンには、芝生広場やビオトープ、菜園などがあり、隣接する多摩川や国分寺崖線の緑地とつながる生物ネットワークを構成しています。周辺の自然環境と調和した都市型バイオフィリックデザインとして、さまざまな賞を受賞しています。

5 - オフィス環境におけるバイオフィリックデザインの取り入れ方と事例

オフィス環境におけるバイオフィリックデザインの取り入れ方と事例

従来、バイオフィリックデザインは、植栽による緑化などの視覚的なアプローチが主流であり、そこにアロマを用いた嗅覚的なアプローチが組み合わさるケースが多く見受けられました。近年では、さらに自然音を用いた聴覚的なアプローチが増え、五感を通じて自然を感じられる取り組みが拡大しています。

オフィス環境にバイオフィリックデザインを取り入れる方法としては、以下のようなアプローチがあります。

視覚的アプローチ
観葉植物などの緑を配置し、照明で自然光を再現する
嗅覚的アプローチ
森林や植物の香りをアロマディフューザーで拡散する
聴覚的アプローチ
BGMとして自然音(鳥のさえずり、川のせせらぎなど)を再生する

以下に、バイオフィリックデザインを取り入れた、株式会社大林組の次世代型研修施設の事例を紹介します。

事例:Port Plus®(神奈川県横浜市)

Port Plus®(神奈川県横浜市)

Port Plus®は、2022年3月に完成した株式会社大林組の次世代型研修施設です。日本初の高層純木造耐火建築であり、11階建て、高さ44mの建物の柱・梁・床・壁が、すべて木材で構成されています。
木の質感と自然光を活かした空間はバイオフィリックデザインそのもの。植栽は最上階のテラスをはじめ、天井も含めて至る所に施されており、リラクゼーションルームには香り空調や森林環境音も完備。五感を活性化し、心身を整えてくれるような空間となっています。

6 - 「KooNe」で実現するバイオフィリックデザイン

「KooNe」で実現するバイオフィリックデザイン

KooNe(クーネ)は、ハイレゾ自然音源(森・川・波)などを流すことで、居心地の良い空間を作り出す空間音響デザインソリューション・サービスです。専用オーディオシステムによる空間音響設計で、間接音を生かし、空間全体を包み込む立体的な音像を実現します。豊かな自然の中に身を置いているような感覚が得られ、高いリラックス効果による集中力や生産性が向上し、ストレスが軽減され、リフレッシュやコミュニケーションの促進が期待できます。

詳しくはこちらをご覧ください。

KooNe(クーネ)| ソリューション

数多くのオフィスに導入されているKooNeについて、以下に導入事例の一部をご紹介します。

導入事例:株式会社大林組 様

導入事例:株式会社大林組 様

前述した大林組様のPort Plus®にもKooNeが導入されています。バイオフィリックデザインを取り入れた『relaxation room』に、聴覚からのアプローチとしてKooNeが採用されました。『relaxation room』ではヨガのレッスンも行われており、インストラクターからは「五感に働きかける要素が揃ったヨガスタジオ」と好評で、従業員からも「集中力がUPする」といった感想が寄せられています。

導入事例:株式会社遠藤照明 様

導入事例:株式会社遠藤照明 様

照明器具メーカーの遠藤照明様では、健やかな生活リズムを整えるための空間として、オフィス内に「アウトドアリラックスゾーン」を設置しています。自然光を再現した照明、緑、アロマ、音といった五感を通じて自然を感じられる空間となっており、音響にKooNeを取り入れています。音源は季節や時間に応じて変化し、本物の森に近い空気感を作り出します。リフレッシュやマインドフルネス、作業に集中したいときなどに利用されています。

導入事例:旭化成株式会社 様

導入事例:旭化成株式会社 様

化学メーカーの旭化成様では、デジタル共創ラボ「CoCo-CAFE」において、サウンドマスキングと場の活性化などを目的にKooNeを導入されました。導入後は会議中の声などの雑音が聞こえにくくなり、空間に溶け込んだ自然音が集中力維持の一助になっています。「CoCo-CAFE」では自然の映像が流れるモニターや植栽も設けられており、KooNeによる自然音が組み合わさることで相乗的なリラックス効果があるといいます。

導入事例一覧はこちら

KooNe導入事例 | ソリューション

7 - まとめ

生産性の向上や従業員のウェルビーイングの実現は、企業が存続していくために不可欠なテーマです。生産性の向上には、DXだけが唯一の解決策ではありません。従業員の心身の健康が増進すれば、それに伴い生産性も向上します。こうした点に寄与するのが、自然とのつながりを感じさせるバイオフィリックデザインです。
バイオフィリックデザインは、さまざまな研究や調査で幸福度、創造性、生産性に対する効果が実証されています。その方法としては、緑化や自然光の活用といった視覚的アプローチにとどまらず、自然音を取り入れる聴覚的アプローチや、アロマを用いる嗅覚的アプローチも含まれます。アイデア次第で多様な取り組み方が可能であり、今後さらにバイオフィリックデザインの普及が進むと予想されます。


編集:株式会社JVCケンウッド・公共産業システム マーケティング担当(2024年9月20日)

<参考資料・出典>
HUMAN SPACES「The Global Impact of Biophilic Design in the Workplace」

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