インタビュー
防災拠点としても機能するフェーズフリー施設、としまみどりの防災公園の取り組み
2022年9月27日
本日は豊島区内最大規模の公園として平常時と非常時を使い分けるフェーズフリー施設、豊島区立としまみどりの防災公園(IKE・SUNPARK)管理事務所所長の村田尭弘様とIKE・SUNPARK広報大使の宇崎真里愛様にインタビューさせていただきました。
プロフィール
豊島区立としまみどりの防災公園様は2020年7月開園。17,000㎡の敷地は豊島区内最大規模の公園で、防災公園としての役割を担っています。平常時は原っぱ広場をメインとし季節の植物も楽しめ、園内にはカフェなどの飲食施設も有し、休日には様々なイベントなども開催しています。
2021年には、グッドデザイン賞(受賞対象名 Park-PFI制度を活用した防災公園[イケ・サンパーク])、PHASEFREE AWARD Silverを受賞しています。
東京都豊島区東池袋4-42
https://ikesunpark.jp/ 公式X 公式Facebook※記載の法人・団体名・組織名・所属・肩書きなどは、すべて取材時点でのものです。
本日はよろしくお願いします。
まずは公園設立の経緯についてお聞かせください。
村田この公園は、元々は造幣局があった場所です。その広大な跡地の活用法として、1984年に地域住民から「生活につながる場所にして欲しい」という要望が出て、2020年7月にそれが実現し開園しました。その際に豊島区はここを単なる公園ではなく、平常時は公園を起点とした地域コミュニティや新しいチャレンジを応援する場として、非常時は防災機能を持つ場所として整備しました。
災害発生時の防災拠点としての役割
防災機能としてはどのようなものがあるのでしょうか?
村田公園の防災機能には大きく分けて3つあり、災害が発生した直後から時間経過とともに機能が変わっていきます。まず一つ目は「一時避難場所としての機能」です。発災時には、火災の延焼を防ぐシラカシが防火樹林として植樹されているので、木造住宅密集地域に隣接する公園として機能します。また主に周辺住民の避難者2,500人を収容できる一時避難場所として機能します。二つ目は「ヘリポート機能」です。区内最大規模の公園として道路の閉塞時には、豊島区防災危機管理課の指揮のもとに空から各種物資や傷病者の搬送を行います。そして三つ目は「救援物資集積拠点としての機能」です。災害時に、国や都、全国各地の自治体等から送られてくる救援物資を本公園に集積し、区内各所の救援センター(避難所)へ搬送します。
ヘリポートとして機能するというのはすごいですね。
村田はい、公園内の6,600㎡ある芝生エリアの中心がヘリポートになります。かなり近寄らないと分からないのですが、その周りには目印となるポイントが点々と打たれています。芝生の風景に溶け込んでいるので、普段はまったく気になりません。また、物資輸送用の大型トラックが園内に入り停められるようになっていますので、空と陸からの物資の搬入や搬出が可能になっています。
その他にはどのような機能がありますか?
村田給水施設として、飲料水として利用できる「応急給水施設」があります。消火用や生活雑用水として利用するための「深井戸」「防災井戸」。そして非常用のトイレ洗浄に使用する「耐震性貯水槽」もあります。また災害時に園内の断水に関わらず利用できる「非常用トイレ」や、災害時の活動に必要な物資を置いておくための「備蓄倉庫」、「非常用発電機」などもあります。また公園内のベンチにはある仕掛けがあります。一見普通のベンチですが、実は中に炊き出し用のかまどが収納されており、災害時にはベンチの座板を開けて取り出せるようになっています。
防災公園として平常時も様々な防災イベントを開催
平常時の公園としてはどのような取り組みをされていますか?
村田防災に関連するイベントなども開催しています。豊島区主催のイベントの企画はコロナ禍でなかなか開催できていないのですが、今年10月に開催する予定でいます。コロナの状況を見てということになるかと思います。民間のイベントや、消防署による防災の訓練などは開催実績としてあります。
民間のイベントとは具体的にはどのような内容だったのでしょうか?
村田今年の5月には、無印良品でおなじみの良品計画さん主催のイベント「いつものもしもキャラバン」がありました。防災と健康とアウトドア、この3つをキーワードに、日常楽しんでいる公共の場所で防災を身近に感じてもらおうというコンセプトで開催されました。バケツリレー体験や火起こし体験、非常食など備蓄品のアレンジレシピ講座などもありました。また、防災に関する書籍の販売など、防災に絡めた様々な催しを園内一円で広めて頂きました。その時には、当公園の広報大使である宇崎さんにも協力していただきました。
宇崎はい!その際には防災のクイズラリー担当をさせていただきました。芝生をモチーフにした公園の公式キャラクター「しばふちゃん」のペーパークラフトを景品としたこともあり、子供たちが数多く参加してくれて大人気でした。子供たちはクイズの設問場所に行って一生懸命に説明を読んで、キーワードとなる平仮名を埋めていました。このような機会でないと知ることができない公園の設備にも触れることができたので、皆さんとても喜んでいました。あとは消防署や警察署の方たちのコーナーでは、隊服を着て記念撮影などもありましたので、小さなお子さんたちだけでなく、親子連れにも喜んでもらえる大きなイベントでした。
地域共生の身近な公園としての取り組み
普段から公園を身近に感じてもらう取り組みも行っているそうですね?
村田公園独自の取り組みとしては、毎週末の「ファーマーズマーケット」があります。埼玉県や85の友好・交流都市・近郊都市から集まる産地直送の新鮮な農産物や食料品、区内商店の名品を販売し、生産者と消費者がつながる場、新たな発見や出会いがうまれる場所として展開しています。また公園内には「EAT GOOD PLACE」というカフェレストランがあります。通常は8時から18時までの営業ですが、金曜日、土曜日の夜のみディナー営業もしています。お仕事帰り、またご家族揃ってなど、テラスでお食事を楽しめます。「コト・ポート」という小型店舗では飲食や物販で新規事業に挑戦したい方に出店いただいています。こちらも公園内での人気スポットとなっています。また、豊島区がイケバスという巡回バスを走らせ、池袋駅から西口公園、南池袋公園、中池袋公園、そしてイケ・サンパークの4つの公園を結んでいます。これは4つの公園を再整備して、公園を軸に街を変えて盛り上げるという豊島区の取り組みです。
宇崎当公園で定時に流れる園内放送は、私が広報大使としてアナウンスし録音した音声が流れるようになっています。また昨年12月の1周年には、この時期に合わせて「イケサン川柳」と銘打ち川柳の募集もしました。老若男女問わず五七五でこの公園の思い出や魅力を川柳にしたものを応募して頂きました。優秀者には区長賞などの様々な賞も用意し大好評でした。また、SNSにも力をいれていて、今の時代にあった取り組みを行うことで、より身近に感じていただける公園になるかと思います。
最後に今後の展望をお聞かせください。
村田最初の1年目は、まずはここに公園が出来たことを知ってもらうことに努めました。それで宇崎さんにもかなり協力をして頂いて地元の方を中心に広く情報発信して頂きました。2年目はここが防災機能を持っている公園だと知ってもらうための情報発信に力を入れた1年でした。3年目となる今年は、公園の認知度向上はもちろんベースにしつつ、より深く主体的に近隣の地域の方々と繋がりを強化するというのを目標にしています。今後は私から皆さんの方に繋がりを作っていくようにできればと思います。東池袋を中心に魅力的な活躍をされている方々はまだまだ沢山いらっしゃいます。そうした方々と繋がって、地域の力となるように我々から積極的に、街の魅力向上に繋げていけるように努力したいと思います。
本日はありがとうございました。
インタビューを終えて
公園を訪れると、園内を走るイケバスや、整備の行き届いた芝生が目に留まり、「池袋にこんなに広くて綺麗な公園があったんだ!」という驚きがありました。
イケ・サンパークでは、日頃の公園利用やイベントを通じて地域住民の方々に防災を認知してもらう活動をしていますが、インタビューを経て、こうした日々の取り組みがもしもの時に役立つことを強く認識しました。
お話を伺う中でとりわけ熱意を感じたのが、地域に密着した公園の取り組みについてお話しされている場面です。地元の方々との関わりやコミュニティをとても大切にされているのが印象的でした。
導入事例(放送設備・防犯カメラ設備)はこちら