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多様性のある社会に広がる「ユニバーサルデザイン」

多様性のある社会に広がる「ユニバーサルデザイン」

持続可能な開発目標「SDGs: Sustainable Development Goals」においては、年齢や性別、障害、民族、宗教などによる差別や不平等をなくすことが目標に掲げられています。1980年代に提唱された「ユニバーサルデザイン(UD)」は、このSDGsと共通する考え方で近年注目を集めています。つまり、「誰一人取り残さない」を掲げるSDGsには、すべての人が利用しやすいデザインで快適に暮らせることをめざすユニバーサルデザインと多くの共通点があります。いま多様性を認め、世界から不平等をなくすための動きが、さまざまな場面で加速しています。

目次

  1. 1 - ユニバーサルデザインとは
  2. SDGsとユニバーサルデザインの共通点
  3. ユニバーサルデザインの考え方
  4. ユニバーサルデザインの広がり
  5. 2 - 情報のユニバーサルデザイン
  6. メディアのUD「MUD(メディアユニバーサルデザイン)」
  7. 人の色覚の多様性に配慮する「CUD(カラーユニバーサルデザイン)」
  8. 色覚の多様性に対応した製品に与えられる「CUD認証」
  9. 3 - ユニバーサルデザインのいま、そして今後
  10. 4 - まとめ

1 - ユニバーサルデザインとは

ユニバーサルデザインは、「Universal(=普遍的な、万能の)」と「Design(=設計、デザイン)」を合わせた言葉で、頭文字をとって「UD」とも呼ばれます。1980年代にアメリカノースカロライナ大学の教授で建築家のロナルド・メイス博士が中心となり提唱されました。誰もが普通に暮らせる街をめざして、1963年にデンマークで提案されたのが「ノーマライゼーション(Normalization)」という考え方。これによって生活の不便を取り除く「バリアフリー(障壁をなくす)」の考え方が広まりましたが、自ら車いす生活を送っていたメイス博士はバリアフリーで特別扱いされることに抵抗を感じ、提唱したのがユニバーサルデザインです。「年齢や能力、状況などにかかわらず、できるだけ多くの人が使いやすいように、製品や建物・環境をデザインする」という考え方は、日本でも1990年代頃から認知されるようになりました。

SDGsとユニバーサルデザインの共通点

SDGsには、2030年までに人類が達成すべき17の具体的な目標が掲げられています。そのなかで以下の3つがユニバーサルデザインの考え方と共通しています。

SDGsとユニバーサルデザインの共通点
目標4「質の高い教育をみんなに」
国籍や性別、経済力などに関わらず、すべての人が学べる環境を整えることを目標に掲げています。
目標10「人や国の不平等をなくそう」
世の中には生まれた国や性別、障がいの有無、宗教など、さまざまな理由で平等性が確保できていません。この目標では多様性を認め、すべての人が活躍できる社会をめざしています。
目標11「住み続けられるまちづくりを」
多くの人が集中し過密化する都市部では、環境汚染、公衆衛生、防災などさまざまな課題を抱えています。この目標では、誰もが暮らしやすい街づくりをめざしています。
以上の目標にユニバーサルデザインが密接に関わっているといえるでしょう。

ユニバーサルデザインの考え方

バリアフリーは、障がいのある人を前提としてバリアを除くという考え方です。一方のユニバーサルデザインは、障がいのあるなしにかかわらず、すべての人が利用しやすいように設計することです。年齢や性別、人種などに関係なく、みんなが使えるものを作ろうというのが、バリアフリーの考え方との大きな違いです。
ユニバーサルデザインにはデザインする上での7つの原則があります。

1.誰でも公平に使える(公平性)
一人ひとりの状況が違っても、誰もが同じようにストレスなく使える。
2. 自由に柔軟に使用できる(自由度)
使う人の能力やさまざまな傾向に合うように作られていて、多様な利用者や使用環境に柔軟に対応できる。
3. 使い方が容易でわかりやすい(単純性)
使う人の経験や知識、言語能力などに関係なく、使い方がすぐに把握できる。
4. 必要な情報がすぐ理解できる(明確性)
使う人の聴覚や視覚などの能力に関係なく、必要な情報がスムーズに提供できる。
5. 間違っても重大な結果にならない(安全性)
うっかりミスや意図しない行動があっても、危害を及ぼすリスクがない。
6. 少ない労力で効率的に楽に使える(省体力)
無理のない姿勢や少ない力で使え、くり返す動作は最小限。からだに負担をかけずに使える。
7. 使いやすい十分なスペースが確保されている(空間性)
どんな体格や姿勢、移動能力に関わらずアクセスしやすいスペースと大きさを確保する。

ユニバーサルデザインの広がり

日本では少子高齢化や国際化が進み、社会環境が変化しています。また、人々の価値観や生活スタイルも多様に変化しています。こうした背景に対応していくためにも、年齢、性別、身体的な状況、言語、国籍など人々がもつさまざまな違いにかかわらず、人が使用するものはできるだけ多くの人にとって使いやすいものにしたい、ユニバーサルデザインが必要とされる理由がそこにあります。たとえば段差のない歩道や点字ブロック、ノンステップバス、センサー式の蛇口、文字が読めない人にも伝わるピクトグラムなどが街にあふれ、普段私たちが使用するさまざまな道具や設備などにもユニバーサルデザインの工夫が施されてきています。

2 - 情報のユニバーサルデザイン

ユニバーサルデザインは生活全般にかかわる広い範囲の設計概念ですが、そのなかでも情報やコミュニケーションにかかわるユニバーサルデザインが特に注目されています。情報は、送り手から受け手に送られ、受け手が理解した時点で初めて情報となります。いかなる個人の属性や状況にかかわらず、すべての人に伝えるための工夫が必要でした。日本における情報のUDは欧米と比べて遅れていましたが、2016年に障害者差別解消法が施行されると、多くの人が情報にたどりつけるかの尺度である「アクセシビリティ」が一気に前進。耳の不自由な人のためのテレビの字幕放送も当たり前のものとなり、インターネットでは使いやすさを示す「ユーザビリティ」をめざすことが重要となりました。

メディアのUD「MUD(メディアユニバーサルデザイン)」

私たちの社会には目で見るメディア(視覚メディア)があふれています。人間は、情報の87%を視覚から得るといわれていますが、子どもや高齢者、目の不自由な人、色覚障がいのある人、外国人など、情報受信にハンディキャップを持った受信者の立場に立ち、わかりやすく伝えることは発信者の責務です。そこで必要なのが情報のユニバーサルデザイン「メディアユニバーサルデザイン(MUD:Media Universal Design))です。印刷物などのUDに取り組むNPO法人メディア・ユニバーサル・デザイン協会は、2007年に活動を開始。誰もが使いやすく、見やすいメディアの提供をめざしています。協会では新聞、雑誌、印刷物、掲示物などにおいて配慮すべきポイントとして5つの原則を挙げています。

1.Accessibility アクセシビリティ (接近容易性)
見えない・読めないなど、情報の入手を妨げる要因を取り除く工夫が必要。
2.Usability ユーザビリティ(使いやすさ)
より快適・便利に使える使いやすさの工夫が必要。
3.Literacy リテラシー(読めて理解できる)
内容が理解しやすい表現や構成による工夫が必要。
4.Design デザイン(情緒に訴える)
情緒に訴え、行動を誘発するデザインによる工夫が必要。
5.Sustainabilityサステナビリティ(持続可能性を満たす品質であること)
実現するのに過大なコスト負担がなく、環境へのやさしいものである必要がある。

人の色覚の多様性に配慮する「CUD(カラーユニバーサルデザイン)」

MUDが必要な社会において特に配慮すべきことのひとつが、色覚障がいのある人への配慮です。人間は目の中にある錐体(すいたい)とよばれるものから赤・緑・青の光を感知することで色を認識しています。この錐体の状態によって、色の見え方が変わってしまいます。現在の日本に色覚障がいのある人は約320万人おり、男性の20人に1人、女性の500人に1人の割合といわれています。色覚の多様性に配慮し、より多くの人に利用しやすい製品や施設・建築物、環境、サービス、情報を提供するという考え方を「カラーユニバーサルデザイン(CUD:Color Universal Design)」と呼びます。
カラーユニバーサルデザインには、3つのポイントが定義されています。
1.できるだけ多くの人に見分けやすい配色を選ぶ。
2.色を見分けにくい人にも情報が伝わるようにする。
3.色の名前を用いたコミュニケーションを可能にする。

色覚の多様性に対応した製品に与えられる「CUD認証」

色覚の多様性に対応した製品に与えられる「CUD認証」

2004年に設立されたNPO法人 カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)では、一定の要件を満たした製品や施設などに、「CUD認証」を与えています。認証が得られると認証マークの表示が可能となり、CUDの証となります。認証審査は訓練を受けた各色覚型の検証員によって行われています。
検証のポイントは、
①多くの人に見分けやすい配色をしているか 
②色のみに依存しないデザインの工夫をしているか
③色の名前を用いたコミュニケーションが可能か、以上の3点です。

CUDへの取り組み

JVCケンウッド・公共産業システムでは、ソフトウェア製品においてカラーユニバーサルデザイン認証を取得するなど、CUDに配慮した製品づくりを推進しています。
・タッチパネル式会議システムソフトウェア「jmee」 議会やあらゆる会議では、進行にあたってマイク・カメラ操作などの機器操作が必要な場面があります。さまざまな方が参加する会議において、誰でもスムーズに会議の進行管理ができるように設計。
また、議会における場内表示モニターもカラーユニバーサルデザインを採用。議員、職員、傍聴者にも見やすいよう配慮しています。
https://www.jvc.com/jp/pro/conference/lineup/pm-5000/feature04/
タッチパネル式会議システムソフトウェア「jmee」
・音声認識表示ソフトウェア 議会では昨今、誰もが傍聴できるようユニバーサルデザインへの対応が推進されています。音声認識表示ソフトウェアは、耳が不自由な方も議会を傍聴できるように議員の発言をリアルタイム文字起こしで可視化。色覚の個人差を問わず誰にでも見やすい色使いで字幕を表示します。 https://jkpi.jvckenwood.com/solution/stt_display_software/
音声認識表示ソフトウェア
(関連事例)相模原市議会様 https://jkpi.jvckenwood.com/case/170_sagamihara.html

・出退表示ソフトウェア 多くの地方議会では、市民や議員、職員に議員の登退庁状況を知らせる出退表示盤を使用しています。議員名変更など操作する場面がある出退表示システムでは、誰でも使いやすいよう考えて作られた操作画面です。また、モニターの表示画面はさまざまな方が目にするので、多くの人が見やすいカラーユニバーサルデザインに配慮しています。 https://jkpi.jvckenwood.com/solution/attendance_display_software/
出退表示ソフトウェア

3 - ユニバーサルデザインのいま、そして今後

政府は東京オリンピック・パラリンピックを控えた2018年に「ユニバーサル社会実現推進法」を施行しました。それをきっかけとして、世界に向けて先進的なユニバーサルデザインの街づくり、心のバリアフリーの実践を推進。さまざまな分野で整備が行われました。狭い道路や段差、わかりにくい案内表示などを見直し、リフト付きバス、UDタクシー車両を普及。鉄道車両の車いすスペース設置個所や、UDトイレも増えました。ピクトグラムを使った表示も街の至るところに設置されました。街には「使いやすい」「安心安全」「わかりやすい」が目立つようになり、ユニバーサルデザインの新しい時代が根付き始めています。
ユニバーサルデザインへの取り組みは、社会貢献と事業拡大を同時に実現できる可能性があり、ビジネスチャンスと捉える企業も増えています。今後もユニバーサルデザインは、ますますビジネスに欠かせない重要なキーワードになっていくと予想されます。

4 - まとめ

1980年代にアメリカで提唱されて約40年、日本でも定着し始めたユニバーサルデザインについての基礎知識をご紹介しました。
すでに私たちの生活にも溶け込み始めたUD製品や設備も増えています。日常の利便性や安全性、公平性を追求した開発は、留まることなく続いていくものと予想されます。多様性に対する知識を深めることで、目の前の課題を発見し改善につなげるユニバーサルデザインの重要性はさらに高まっていくことでしょう。


編集:株式会社JVCケンウッド・公共産業システム マーケティング担当(2022年12月27日)

<参考資料・出典>
公益財団法人 日本ユニセフ協会「SDGsって何だろう?」
NPO法人実利用者研究機構「UD資料館」
NPO法人メディア・ユニバーサル・デザイン協会
NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構

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