コラム
顔認証とは?現代社会に貢献する顔認証システムの活用法
2024年3月5日
顔認証システムは個人や企業におけるセキュリティ対策のニーズの高まりと共に、広く活用されるようになりました。昨今は入退室管理や店舗決済、店舗の無人化といったビジネス用途のみならず、パソコンやスマートフォンなどデバイスのログオン認証といった日常生活における個人用途でも用いられています。企業や団体において顔認証はさまざまな用途で用いられていますが、技術的な面など理解が難しい点もあり、まだ活用していないという企業も少なくありません。顔認証システムには種類があり、導入に当たっては課題となる注意事項もあります。本記事では、顔認証システムの仕組みや実際の活用などについて詳しく解説します。
目次
1 - 顔認証とは、生体認証システムの一種
顔認証は、カメラで撮影した画像・動画から顔領域の大きさや特徴点(目、鼻、口)の位置といった情報を収集・照合することで、本人かどうか確認できる生体認証の一つです。生体認証には顔認証の他にも、指紋や声紋、掌紋、虹彩、DNAなどさまざまなものがありますが、その中でも顔認証はセキュリティ性が高く、非接触である点や他機能との組み合わせも可能な点がメリットといえます。
顔認証の用途として、日常生活の身近なものではスマートフォンやタブレット、パソコンにおける本人確認が挙げられます。端末に搭載されたカメラを使用して顔認証を行い、本人である確認が取れない場合は画面を開けない、一部機能の利用が制限されるというものです。また、ビジネス用途においては、施設の入退室管理や勤怠管理にも用いられます。高いセキュリティ性や利便性を評価され、ビジネスから日常生活まで活用の場が広がっています。
2 - 「顔認証」と「顔認識」、混同しやすい両者の違い
顔認証と混同されやすいものに「顔認識」があります。
顔認識は画像・ビデオから人の顔を検出し、その向きや位置、表情などの情報を分析。そして、分析した情報から顔の特徴を抽出します。年齢や性別、表情なども判別もすることができ、複数の顔画像を比較して一致性を照合することも可能です。
一方、顔認証は、検出した顔情報から登録された個人であるかどうかを照合します。
本人確認が主な用途であり、セキュリティ対策として用いられることの多い技術です。顔認識技術を用いて識別したデータを照合し、本人確認を実現するのが顔認証といえます。
3 - 顔認証のメリットと活用用途
近年では、2001年のアメリカ同時多発テロをきっかけとして顔認証の需要が高まり、テロを防ぐ目的から空港などで顔認証技術が導入されるようになりました。
その後も、デジタル化の浸透によるセキュリティ対策の重要性から、顔認証は私たちの生活により身近なものになってきています。
例えばスマートフォンやパソコンといったデバイスにおいて、認証方法がパスワードのみの場合、紛失や盗難などによって情報漏洩に繋がるリスクが存在します。しかし、顔認証で使用者を制限すれば、こうしたリスクを抑えることが可能です。また、入退室管理において、ICカードの不正利用や悪用の対策として顔認証システムを使用するケースも少なくありません。施設におけるセキュリティ対策の向上は、企業などにおける対外的な信頼性の向上にもつながります。
また、顔認証はサービス用途でも活用されるようになりました。昨今は労働人口の減少から、労働者不足に陥っている企業が少なくありません。この労働者不足をICTの活用によって補うため、顔認証システムはサービス面でも用途が広がっています。例として、店舗決済やイベント施設における会員管理、その他施設の無人運営化などが挙げられます。
さらに、コロナ禍において高まったのが“非接触”へのニーズです。顔認証は非接触で行われることから、衛生面にも配慮でき、目的や用途、状況に応じて他の機能と組み合わせることができるため、検温機能を搭載した顔認証システムが施設の入退場管理に多く用いられました。
以下、顔認証システムの用途について、セキュリティ対策とサービス面及び業務効率化とに分けて紹介します。
セキュリティ対策としての用途
- デバイスのログオン
- パソコンやスマートフォン、タブレット等を業務に用いる場合、これらのデバイスには機密情報や個人情報が保存されることがあり、何らかの原因で他者に使用された場合、情報漏洩やウイルス感染といったリスクがあります。
デバイスへのログオンに顔認証システムを用いて認証、使用者を制限することで、こうしたリスクを抑えることができます。
パスワードのみによる認証では文字列の予測や漏洩といったリスクがあり、指紋認証では触れたものに残った指紋を盗まれてしまう可能性などがありますが、顔認証であれば、こうした不正利用がされにくくなります。 - 施設の入退室管理
- 多くの人が出入りする施設では、不審者や部外者の侵入がリスクとして考えられます。顔認証システムで入退室管理を行えば、未登録者を検知して侵入を防ぐことが可能です。
警備員を配置することも可能ですが、人間による目視では限界があるほか、人的コストも掛かります。また、ICカードは不正入手したものを利用されるかもしれませんし、指紋認証も触れたものから指紋を盗まれるリスクがあります。
顔認証システムを活用することで、セキュリティ性を高めると共にコスト削減も期待できます。 - 空港での出入国
- 出入国手続きを効率化させるために、複数の空港で顔認証システムを用いた「顔認証ゲート」が導入されています。これは、パスポートのICチップ内に保存された顔写真と、ゲートのカメラで撮影した顔画像を照合し、本人確認するというものです。入国審査官による確認や証印が不要なため、出入国手続きがスムーズに行えます。
サービス面や業務効率化としての用途
顔認証などICTを活用し、サービス品質を高めて顧客満足を向上させたり、業務効率化により労働者不足を補い、従業員の負荷軽減が期待できます。こうした意図から、以下のように企業のサービスでも顔認証システムの活用が拡大しています。
- 店舗決済
- 事前に氏名や顔写真、決済情報(クレジットカード情報、QRコード決済情報など)を登録しておき、店舗で買い物をした際に顔認証で決済を完了できます。
クレジットカード情報等の流出リスクを減らせるほか、非接触かつ手ぶらで決済できる高い利便性が特徴です。すでに国内の大手企業でも実店舗で実証実験が行われており、本格導入に向けた動きが加速しています。
店舗決済に顔認証システムを利用すれば、企業はレジ対応等に割かれている人的・時間的コストを削減することが可能です。 - ホテルやイベント施設での会員管理、入退室管理
- 施設で受付時に顔認証を行うことで、会員以外の入室を制限したり、入退室情報を管理したりすることが可能です。
不正入室によるトラブルを防ぐほか、イベント等では出欠状況や人数を把握することで運営がスムーズに行えます。ホテルやイベント等でVIPのみ顔認証による入退室を行い、いわゆる“顔パス”で特別感を提供することも可能です。 - 施設の無人運営
- スポーツジムやセルフサロン等で入口に顔認証システムを導入し、店舗を無人運営することも可能です。
スマートキーを利用する方法もありますが、鍵番号を用いて不正利用されるなどのリスクがあります。セキュリティ面への配慮は必要ですが、無人の方が気兼ねなく利用できるというユーザーも少なくありません。
4 - 顔認証システムの課題
顔認証にも、活用にあたり以下のような課題があります。
- システムの精度
- 顔認証システムは100%の精度ではありません。上手く認証できない場合や、誤って認証する場合もあります。特にカメラが設置された場所の明るさや光の当たり方、あるいはカメラの汚れなどの環境によって、その精度は左右されます。
セキュリティレベルの高い用途に使用する場合は、顔認証のみではなく他認証方法との併用など対策が必要です。 - 個人情報の取り扱い
- 顔認証システムでは顔写真や氏名をはじめ、多くの個人情報を取り扱います。事前に利用目的を伝えたうえで本人から承諾を得ることはもちろん、データ利用の規程を設けるなど、個人情報保護への対応が欠かせません。
また、個人情報の流出を防ぐため、データ保管先の高いセキュリティ性も十分に確保する必要があります。 - なりすまし
- 本人の写真などを用いて顔認証を突破された場合、他者による“なりすまし”被害が起こる可能性があります。顔認証技術の向上により写真を使ったなりすましへの対策は進んでいますが、IDカードや指紋認証、ジェスチャーといった他の認証機能と組み合わせることでも、なりすまし防止対策が可能です。
逆に、IDカードによる入退室管理を行っている場合、顔認証を組み合わせることでセキュリティ性を高めることもできます。
5 - 顔認証システムの仕組み
顔認証システムの仕組みは、大きく「エッジ型」と「サーバー型」の2種類に分けられます。違いは、認証をどこで行うかという点です。エッジ型は、カメラなどのエッジ端末に顔認証を行うソフトが搭載されており、この端末内で顔認証を行います。一方で、サーバー型はカメラで撮影した画像・動画をサーバーへ送り、サーバー側で顔認証を行うしくみです。エッジ型とサーバー型については、以下でそれぞれの仕組みを詳しく解説します。また参考として、システムリソースの管理方式は「オンプレミス方式」と「クラウド方式」があります。オンプレミス方式は、サーバーなどの設備を自社で保有し、ハードウェアの導入から保守・運用までを自社で管理するものです。これに対し、クラウド方式はクラウドサーバーでデータが管理され、その保守・運用はクラウドサーバー(サービス)の提供事業者が行います。
エッジ型
エッジ型は、顔認証を行うソフトが端末に組み込まれているタイプです。認証用データも端末内に登録してすべてエッジ端末で完結するシステムや、解析をエッジ端末とサーバー両方で行うシステム、解析自体はエッジ端末で行い、必要な情報をサーバーへ送信し、認証のみサーバーで行うといったシステムもあります。
なお、サーバーはオンプレミス方式もしくはクラウド方式が用いられるほか、両者を連携させたハイブリッド方式も存在します。
エッジ型はデータ送信による遅延が無いためリアルタイム性が高く、サーバーと連携することで認証処理スピードが高められる点がメリットです。また、後述するサーバー型と比べて、通信データ量も抑えられます。ただし、専用のソフトを搭載したカメラやハードウェアが必要になります。
サーバー型
サーバー型は、カメラで撮影した動画・画像データをサーバーに送り、サーバー側で画像解析を行うことで顔認証を行うタイプです。なお、サーバー型にもオンプレミス方式とクラウド方式の両方があります。
サーバー型はサーバーに多くのデータが蓄積できるため、深層学習によって顔認証の精度が高まります。専用端末が不要なため、導入コストが安く抑えられる点もメリットです。ただし、情報の送受信にネットワークを用いるため、不正アクセスやこれに伴う情報漏洩などのリスクに対するセキュリティ対策が欠かせません。
また、エッジ型と比較して大量のデータを送受信するため、通信コストの増大や、認証に時間を要する場合があります。
6 - クラウド型映像セキュリティサービス「Jchaser」について
クラウド型映像セキュリティサービス「Jchaser(ジェイチェイサー)」は、顔認証の機能を備えたセキュリティサービスで、マンションの巡回監視やオフィスの出社状況確認、複数ある店舗の状況確認など、顔認証を使用したさまざまな用途に利用できます。
- 「Jchaser」の特長
- ・監視カメラの映像と事前に登録した顔情報からリアルタイムに顔認証
・クラウドに記録した過去の映像から特定の人物を検索
・複数のカメラ映像から特定の人物を検索
・追跡
このサービスは、クラウド方式/サーバー型かつエッジ型の技術も取り入れたハイブリッドな顔認証システムで、以下のようなクラウド方式+エッジ型の特長を持っています。
- ・セキュアなデータ管理で高いセキュリティ対策
・ソフトウェアはクラウドを経由してアップデートが可能
・レコーダーのように消耗部品がなく、メンテナンスが不要
・初期投資が少なく、手軽に早く導入できる
詳しくはこちらをご覧ください。
7 - まとめ
セキュリティやサービス面、業務効率化など活用の広がっている顔認証について解説しました。顔認証は一般企業や空港といった公共施設、店舗などでも使用され、利用する企業・団体が増えてきました。今後もさらに活用が広がっていくと思われます。
用途に適した認証システムを選ぶには、本記事やメーカー資料などを参考に、認証システムそれぞれの特徴を理解したうえで、メリットとデメリットの双方を踏まえて他認証方法と併用するなど、自組織に合ったシステムを検討してください。
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編集:株式会社JVCケンウッド・公共産業システム マーケティング担当(2024年3月5日)
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