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防災・減災に繋げる、インフラ強靭化対策の具体例

インフラ強靭化対策の具体例

日本国内のインフラ施設の多くは、建設から50年を経過するものが増えてきており、老朽化が進んでいる状況です。老朽化によって人命が失われる事故が起きているほか、温暖化による自然災害の激甚化もあり、早急なインフラ整備が求められています。
一方で、少子高齢化が進む地方自治体では十分な財源が用意できず、インフラの適切な維持管理が困難になっています。こうした課題に対応するため、政府では「国土強靭化」としてインフラ整備計画を進めてきました。そこで本記事では、国主導で取り組むインフラ施設の強靭化について、詳しく解説します。

目次

  1. 1 - 増加傾向にある自然災害とインフラ施設への影響
  2. 2 - 国土強靭化とは
  3. 国土強靱化の基本計画
  4. 国土強靱化を推進する上での基本的な方針
  5. 3 - インフラ施設に強靭化対策が必要な理由
  6. 4 - 政府による「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」
  7. 激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策
  8. 予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策
  9. 国土強靱化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進
  10. 5 - インフラ施設の予防保全による強靭化の効果
  11. 6 - 国が主導するインフラ施設強靭化の具体例
  12. 流域治水(砂防)対策 〜長野県白馬村 砂防堰堤整備事例〜
  13. 交通・物流の機能確保対策 〜大分県国東市 空港耐災害強化事例〜
  14. 電力の安定供給確保対策 〜北本連系線 電力安定供給対策事例〜
  15. 7 - 令和6年度の国土強靱化関係予算と、国土強靭化対策に役立つ技術
  16. 8 - インフラ施設監視カメラシステム
  17. 9 - まとめ

1 - 増加傾向にある自然災害とインフラ施設への影響

近年、自然災害の激甚化・頻発化が指摘されています。巨大地震のリスクを抱える日本ですが、最近では毎年のように豪雨による被害も出ています。国土交通省の公表資料によると、2019年の水害被害額(津波以外)は統計開始以来最大の約2兆1,800億円となりました。
自然災害はインフラにも影響を与えます。例えば、熊本地震の際には大規模な斜面崩壊によって鉄道や道路が埋没したほか、阿蘇大橋が崩落し、交通インフラに打撃を与えました。令和2年7月豪雨では橋梁の流失、道路の流失、大規模土砂崩落の影響による道路の寸断などが発生しています。
高度成長期から50年が過ぎた現在ではインフラの多くが老朽化し始めており、自然災害が激甚化していく中インフラの老朽化も進めば、被害の規模はさらに大きくなります。その一方、地方自治体にはインフラを適切に維持管理していくための財源が足りていません。こうした背景から、国主導の国土強靱化がインフラの老朽化対策として重要になってきます。

2 - 国土強靭化とは

国土強靭化とは

国土強靭化とは、「大規模自然災害時に人命を守り、経済社会への被害が致命的にならず、迅速に回復する『強さとしなやかさ』を備えた国土、経済社会システムを平時から構築していくこと」を指します。被害を受けてから長期間の復旧・復興に取り組む事後対策ではなく、事前の備えとして災害に対するレジリエンスの高い国土を目指します。
過去の自然災害で事後対策を余儀なくされてきた教訓から、政府は2013年に「強くしなやかな国民生活の実現を図るための 防災・減災等に資する国土強靱化基本法」を施行、5年ごとに見直される国土強靱化基本計画に沿い、防災・減災の取り組みを行っていく方針が打ち出されました。

国土強靱化の基本計画

国土強靭化基本計画とは、国土強靭化基本法第10条に基づく計画です。「大規模自然災害等に備えた国土の強靱な国づくりを推進する」こと、「必要な施策は明確な目標のもと、現状の評価を行うことを通じて策定、国の各種計画に位置付ける」ことを目的としており、国土強靭化基本計画はその指針となるものとされています。関係府省が国土強靱化関係の予算を要求する際の基本にもなります。
計画は概ね5年ごとに見直されており、2023年にも新たな国土強靱化基本計画が閣議決定されました。新たな国土強靱化基本計画では、国土強靱化の理念として①人命の保護②国家・社会の重要な機能が致命的な障害を受けず維持される③国民の財産及び公共施設に係る被害の最小化④迅速な復旧復興の4つの基本目標が設定されています。

国土強靱化を推進する上での基本的な方針

国土強靱化の基本的な方針としては、以下の5つの柱が打ち出されています。

国民の生命と財産を守る防災インフラの整備・管理
予防保全型メンテナンスへの本格転換など、防災インフラ(河川・ダム、砂防・治山、海岸等)の充実・強化を図り、予防保全により適切に維持管理する。
経済発展の基盤となる交通・通信・エネルギーなどライフラインの強靱化
壊滅的な損害を受けない耐災害性の高い構造物補強、広域的・戦略的なインフラマネジメントなど、交通(道路・鉄道・空港・港湾等)、通信、エネルギーなどのライフラインを強化し、かつ代替性を確保する。
デジタル等新技術の活用による国土強靱化施策の高度化
線状降水帯の予測精度向上など、デジタル技術を含めて積極的に新技術を活用し、災害対応力の向上など、国土強靱化施策の高度化を図る。
災害時における事業継続性確保を始めとした官民連携強化
防災投資や民間資金活用など、サプライチェーンの強靱化も含め、災害が発生しても民間経済活動が継続できるよう官民の連携を図る。
地域における防災力の一層の強化
地元企業やNPO等の多様な市民セクターの参画による地域防災力の向上など、地域の特性に応じて、国民一人一人の多様性を踏まえた地域コミュニティの強靱化、地域防災力の向上を図る。

3 - インフラ施設に強靭化対策が必要な理由

先述の「国土強靱化を推進する上での基本的な方針」では、インフラ施設の強靱化も打ち出されています。自然災害によってインフラ施設に障害が出た場合、社会システム自体が機能しなくなるリスクがあるためです。道路が土砂に埋もれてしまえば交通や物流が機能しなくなり、ライフラインの寸断は命にも関わります。また、インフラ施設の損壊が大きければ多額の修繕費がかかり、財政にとっても打撃となります。
しかし冒頭でも述べたように、インフラ施設の老朽化が進む中、地方自治体には適切に維持管理していくための財政的な余裕がありません。加えて、自然災害が激甚化・頻発化している昨今では、老朽化対策などの国土強靱化が喫緊の課題となっています。

4 - 政府による「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」

防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策

国土強靭化を加速させるため、政府は2021年~2025年の5年間で重点的に取り組むべき対策を定めました。それが「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」です。以下に、その具体的な対策について紹介します。

激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策

自然災害への対策としては、全体で78の対策が提示されています。人命・財産の被害を防止・最小化するための対策としては、河川・下水道・砂防・海岸・農業水利施設の整備といった流域治水や港湾における津波対策、地震の際に危険な密集市街地対策、漁港施設の耐震・耐津波・耐浪化などが挙げられています。
また、交通ネットワーク・ライフラインを維持し、国民経済・生活を支えるための対策として、幹線道路等のうち未整備の部分=ミッシングリンクの解消、暫定2車線区間の4車線化、ダブルネットワーク化といった道路ネットワークの機能強化や、緊急輸送道路における無電柱化、送電網の整備・強化、水道施設(浄水場等)の耐災害性強化、上水道管路の耐震化などが挙げられます。

予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策

予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策としては、全体で21の対策が提示されています。具体的には、河川管理施設・道路・港湾・鉄道・空港の老朽化対策、老朽化した公営住宅の建替、農業水利施設の老朽化、豪雨・地震対策、公立小中学校施設の老朽化対策、国立大学施設の老朽化・防災機能強化対策などです。

国土強靱化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進

施策を効率的に進めるためのデジタル化推進に関しては、全体で24の対策が提示されています。具体的には、連携型インフラデータプラットフォームの構築といったインフラ維持管理に関する対策、無人化施工技術の安全性・生産性向上対策、ITを活用した道路管理体制の強化などです。

5 - インフラ施設の予防保全による強靭化の効果

インフラ施設の予防保全による強靭化の効果

先述の「国土強靱化を推進する上での基本的な方針」や「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」では、予防保全型インフラメンテナンスへの転換が打ち出されています。
従来のインフラメンテナンスは、不具合が出てから原因の調査や修理を行う、事後的なメンテナンスです。一方、予防保全型のメンテナンスでは、不具合が出る前に、点検でインフラ施設の耐久性を調査し、修繕や補強などの対策を行います。予防保全型へと転換することで、被害を最小限に抑える(修繕費も安くなる)、迅速に復旧できる、といったことが期待できます。
実際に、国土交通省では予防保全に転換した場合の効果を推計しています。予防保全に転換した場合、2019年〜2048年までの30年間の維持管理費・更新費の合計が、事後保全を継続した場合に比べ、約3割縮減できるとしています。

6 - 国が主導するインフラ施設強靭化の具体例

国が主導するインフラ施設強靭化の具体例

ここではインフラ施設の強靱化対策として、近年、国が主導して取り組んでいる事例を紹介します。

流域治水(砂防)対策 〜長野県白馬村 砂防堰堤整備事例〜

流域治水とは、河川の流域全体で行う治水対策です。上流域から下流域まで、流域全体の関係者が連携して水害の防止を目指します。従来は河川管理者が治水を行ってきましたが、近年は豪雨災害の激甚化より、受ける被害の規模も大きくなっていることから、流域治水が注目されるようになってきました。
長野県白馬村には姫川の源流部に長見山沢北と呼ばれる渓流があります。長見山沢北から土石流が発生した場合、下流の人家や鉄道、国道などのインフラに被害が及ぶことが想定されていました。そのため、流域治水の考え方に沿って、2022年に砂防堰堤が整備されました。
砂防堰堤とはダムの一種で、上流からくる土砂を受け止め、下流に流れる土砂の量をコントロールします。砂防堰堤の完成により、豪雨によって土砂が流れてきた際にも下流の人家やインフラが保全されるようになりました。

交通・物流の機能確保対策 〜大分県国東市 空港耐災害強化事例〜

災害が発生した際には、道路が寸断されるなど、交通・物流機能に被害が及びます。復旧に時間がかかれば、救助が間に合わなくなったり、災害関連死を招いたりする事態にもなりかねません。そのため、交通・物流の機能を確保する対策は防災・減災にとって非常に重要です。具体的な対策としては、交通インフラ施設の耐震化や交通手段の代替性の確保などが挙げられます。
大分県国東市にある大分空港では、滑走路の耐震対策を実施。従来の滑走路では、地震による液状化で舗装が沈下してしまうと、復旧までに長期間を要します。耐震対策によって液状化の被害を軽減すれば、空港機能の復旧は速やかになると期待されます。災害の際に、空港を救急・救命活動などの拠点として活用できるようにするためにも、早期の機能復旧は欠かせません。

電力の安定供給確保対策 〜北本連系線 電力安定供給対策事例〜

ライフラインの中でもとくに重要なのが電力です。電力が止まれば、医療機関や交通機関、通信施設などが機能停止し、人々の生活に大きく支障をきたします。2018年9月に起きた北海道胆振東部地震では、大規模な停電(ブラックアウト)が発生し約11時間、全道で電力の供給がストップ。30時間を経過した時点で5割が復旧し、北海道電力が復旧宣言を行ったのは約64時間後でした。停電の長期化によって携帯電話の基地局の非常用電源が枯渇、最大約6,500基地局が停波しました。
この教訓から北海道電力は、国主導のもと、北海道と本州を結ぶ送電線「新北本連系線」を2019年に新設しました。従来の北本連系線では送電能力が60万キロワットでしたが、新北本連係線の運転開始を受けて送電容量は90万キロワットに増加。災害時における電力確保のためのレジリエンスが向上しています。

7 - 令和6年度の国土強靱化関係予算と、国土強靭化対策に役立つ技術

令和6年度(2024年)の国土強靱化関係予算案は、前年比の1.1倍となる5兆2,201億円となっています。ポイントとして、資材価格の高騰や女性・子どもといった災害弱者の視点も踏まえ、「ハード・ソフト一体となった取組を強力に推進する」としています。
国土強靱化に役立つ技術の検討も進められています。その一つが、水門等操作の自動化・遠隔操作監視システムで、従来、運転操作員が行っていた水門などの主たる操作を遠隔で行えるようにしたり、自動化したりするものです。まずは、1人の操作員でカメラ映像や水位データを確認しながら遠隔操作できるようにし、最終的にはフルオートメーションの運用を目指します。
また、スーパーコンピューターを活用した線状降水帯の予測精度向上なども注目されています。気象衛星や地上の気象レーダーから得たデータを解析することで、予測精度の向上を図るというものです。
気象庁では線状降水帯の「半日前予測」を出していますが、現状の予測は広域ブロックごとになっています。スーパーコンピューターの解析によってより細かい範囲での予測を可能にし、2024年には都道府県単位、2029年には市町村単位での予測発表を実施する予定です。集中豪雨をもたらす線状降水帯の予測精度を高めることで、適切な治水対策や住民への避難誘導が可能になります。

8 - インフラ施設監視カメラシステム

インフラ施設監視カメラシステム

監視カメラシステムは定点で映像を確認・記録し、長期間の中で起きる変化や差分を発見することができます。安全かつ安定したインフラ施設の維持に、映像監視システムは欠かせない技術と言えます。
特に電力や鉄道、水道といったインフラは、広い地域に渡って設備を運用・管理しなくてはなりません。そのため、複数の施設を専用ネットワークで結び、集中監視・制御するシステムを構築することが求められます。
「インフラ施設監視カメラシステム」はインフラ施設でのカメラ・センサーによる統合監視を実現。広域な施設、あるいは複数施設でも一元的に統合管理が可能です。インターホン連携によって遠隔で監視や受付対応も行えるほか、カメラによる映像監視と各種センサーやデバイスを連携させることで、センサーの検知情報とカメラ映像をまとめて確認できます。
これにより、監視業務の効率化、セキュリティや安全対策の強化が可能です。

詳しくはこちらをご覧ください。

インフラ施設監視カメラシステム

9 - まとめ

「大規模自然災害時に人命を守り、経済社会への被害が致命的にならず、迅速に回復する『強さとしなやかさ』を備えた国土、経済社会システムを平時から構築していく」という国土強靱化。インフラ施設の強靱化は、国土強靱化基本計画や方針、5か年加速化対策のいずれにおいても打ち出されており、特に事後対策から予防保全への転換は、インフラ施設の被害を減らし、早期に復旧させる上で重要になります。インフラ施設の老朽化が進み、災害が激甚化する中、強靱化は喫緊の課題です。少子高齢化を背景に地方自治体だけではインフラ施設の維持管理が難しくなる中、災害による機能不全を避ける上で国が主導する「国土強靱化」に期待が寄せられます。


編集:株式会社JVCケンウッド・公共産業システム マーケティング担当(2024年5月14日)

<参考資料・出典>
国土交通省「国土交通省におけるインフラメンテナンスの取組」
内閣官房 国土強靭化推進室「令和6年度国土強靭化関係予算案の概要」

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