ホーム > Media Site > 防災公園とは

身近な都市公園が防災拠点に~災害時に活躍する「防災公園」とは~

防災公園とは

身近な憩いの場である「公園」。都市公園法に基づいて国や自治体が設置している公園は「都市公園」と呼ばれ、全国に10万か所以上あります。都市公園の役割は時代に応じて変化しており、近年は遊ぶだけではない、さまざまな機能が求められています。中でも災害時の防災拠点として活用される都市公園は「防災公園」と呼ばれ、全国で整備が進められています。
本記事では、防災公園の役割について解説します。

目次

  1. 1 - 都市公園・防災公園とは
  2. 都市公園の定義と役割
  3. 防災公園の定義と役割
  4. 2 - 防災公園が果たす機能
  5. 住民の安全確保と意識向上
  6. 地域課題への対応
  7. 防災公園が体現するフェーズフリーという考え方
  8. 防災公園の事例
  9. 3 - 防災公園の法整備
  10. 都市公園法と災害対策基本法
  11. 都市公園法改正のポイント
  12. 4 - 防災公園を支える音響・映像設備
  13. 5 - まとめ

1 - 都市公園・防災公園とは

都市公園・防災公園とは

私たちの身近にある公園は、都市公園として国や自治体が設置したものです。その中でも防災に役立つさまざまな設備を備えた公園は防災公園と呼ばれます。

都市公園の定義と役割

「都市公園」とは都市公園法に基づいて国や自治体が設置した、公園または緑地のこと。身近な公園のほとんどが都市公園であり、令和元年度末時点で全国に10万か所以上設置されています。
都市公園は、地域住民の交流の場としてコミュニケーションを活性化させると同時に、緑化などにより街の環境を住みやすいものにしてくれます。
国は社会インフラの整備を目的として地方公共団体に社会資本整備総合交付金を出しており、都市公園の整備は交付対象となる基幹事業の一つです。
国土交通省が示す「豊かで利便性の高い地域社会の実現や民間投資の誘発を図る」という考えのもと、地方公共団体は整備計画を策定して交付申請をします。計画の目標設定の例としては「公園利用者数の増加」や「都市域における水と緑の公的空間確保量の増加」などが挙げられます。

防災公園の定義と役割

防災公園の定義と役割
画像提供:豊島区立としまみどりの防災公園

都市公園の中でも地方公共団体の地域防災計画に基づいて整備される公園は「防災公園」と呼ばれます。備蓄倉庫や耐震性貯水槽、テント用地などを備え、災害時には避難地や救援物資の中継地としての役割を果たします。
国は社会資本整備総合交付金および防災・安全交付金によって防災公園の整備を支援しており、総事業費が市区町村で2.5億円以上、都道府県で5億円以上の整備事業に対し、総事業費の1/3~1/2を助成しています。

補助対象となる災害応急対策施設の例
・備蓄倉庫
・耐震性貯水槽
・発電施設
・放送施設
・情報通信施設
・ヘリポート
・係留施設
・延焼防止のための散水施設

このような子どもや高齢者をはじめ誰もが安全で安心して利用できる都市公園の整備が推進されることにより、安心で質の高い暮らしの実現が図られる効果が期待されます。

2 - 防災公園が果たす機能

防災公園が果たす機能

以下に防災公園が果たす機能やフェーズフリーという考え方、防災公園の事例を紹介します。

住民の安全確保と意識向上

防災公園を整備する目的は、災害から住民を守ることです。備蓄倉庫や耐震性貯水槽、災害用トイレなどが備えられていることで避難者の生存率が高まるほか、消防や救急の拠点として活用することで速やかな救助が行えるようになります。また、オープンスペースである公園は、火災時の延焼を防ぐ緩衝地帯としての役割も果たします。
生活圏の中にある防災公園は、普段から地域住民に認識されているため、災害時に迷わず避難できる利点があるほか、防災訓練の場としても使いやすく、それぞれの地域の特性に即した実践的な避難の仕方を学べます。地域の防災意識を高めていく上でも有効な拠点となります。

地域課題への対応

防災公園の整備は地域課題の解決にも役立ちます。例えば、老朽化した公共施設の再編です。東京都三鷹市では防災公園の整備に合わせ、スポーツセンターなどの老朽化していた公共施設を集約し、新たに市民の健康・福祉・スポーツなどの拠点を作り出しました。
また、防災公園の整備は街地の整備と併せて実施することもあります。東京都北区では消防活動や住民の避難に支障のあった狭隘な道路を防災公園の整備に合わせて拡幅。緊急車両の進入路を確保しました。このように、防災公園の整備を通じ、複数の地域課題を同時に解決することができます。

防災公園が体現するフェーズフリーという考え方

「フェーズフリー」とは、日常と災害時をわけないことを意味します。フェーズフリーの製品やサービスは日常で使われるものが災害時でも役立つようなデザインがなされています。例えば、普段は車として利用され、非常時には電源にもなるPHV車はフェーズフリー製品といえます。
災害に備えておきたいけれど、「何をどれだけ備えるべきか」というのはわかりにくいもの。普段から使っている製品やサービスが災害時にも使えるならば、いざというときに大いに役立ちます。平時には地域住民の憩いの場として利用され、災害時には避難地などとして利用される防災公園の整備は、まさにフェーズフリーの考え方を体現する取り組みといえます。

防災公園の事例

防災公園の事例
画像:インタビュー「豊島区立としまみどりの防災公園」より

令和2年にオープンした「豊島区立としまみどりの防災公園(愛称IKE・SUNPARK)」は豊島区内最大規模の防災公園です。約6,600㎡の芝生広場のある緑豊かな憩いの場として親しまれており、大規模災害の発生時には近隣住民や帰宅困難者の一時避難場所となるほか、災害対策拠点にもなります。また、放送設備・防犯カメラ設備も導入されており、平時には園内アナウンスやセキュリティ対策として利用されていますが、非常時には情報伝達設備としての活用が可能です。

3 - 防災公園の法整備

以下では防災公園に関連する法律(都市公園法、災害対策基本法)について紹介します。また、都市公園法の平成29年の改正について、改正のポイントをお伝えします。

都市公園法と災害対策基本法

都市公園法は、都市公園の設置や管理に関するルールを定めた法律です。都市公園は同法において、国や地方公共団体が都市計画に基づいて設置する公園や緑地として定義されています。都市公園の設置基準に関しては、「政令で定める都市公園の配置及び規模に関する技術的基準を参酌して条例で定める基準に適合するように行うものとする」とされています。
災害対策基本法は、災害から人々の生命や財産を守るための法律です。災害対策本部の設置基準や防災計画作成の際のルールなど、国や地方公共団体が災害対策に取り組む際の基本的な枠組みを提示しています。

都市公園法改正のポイント

都市公園法は昭和31年に制定されて以降、数回の改正が行われています。最近では平成29年に改正されました。以下では平成29年の改正のポイントについて解説します。

ポイント1:公募設置管理制度(Park-PFI)の創設
公募設置管理制度とは、都市公園の売店などの設置や管理を担う事業者を公募で選ぶ仕組みです。地方公共団体の財源だけでは老朽化対策などが十分に行えないため、民間資金の活用を推進すべく創設されました。民間事業者のノウハウによって公園施設の収益を上げ、地方公共団体の負担を低減することが期待されています。
ポイント2:保育所等の占用物件への追加(特区特例の全国措置化)
国家戦略特区内の都市では特例として、都市公園に保育所などの社会福祉施設が設置可能になりました。これにより、待機児童の解消や地域住民と子どもたちとの交流、小児のケアに対応した防災機能の強化(おむつやミルクの備蓄など)が期待されています。

4 - 防災公園を支える音響・映像設備

防災公園を支える音響・映像設備
画像:インタビュー「豊島区立としまみどりの防災公園」より

防災公園で役立つ設備として、音響・映像設備について紹介します。
災害時には迅速かつ正確な情報伝達が命を守る上で重要になります。防災公園においては、音響システムを設置することで広範囲にわたるアナウンスが可能になり、避難者の適切な誘導ができるようになります。また、防犯カメラなどの映像設備は園内のセキュリティ強化に役立ち、安全性の確保につながります。
JVCケンウッドが提供する音響・映像設備は、都市公園の利便性を向上させると同時に防災にも役立つ機能を備えています。例えば、平時は園内アナウンスや報時チャイム、メッセージ放送などが可能な業務放送システムは、災害時には防災・減災情報の伝達手段として活用できます。

5 - まとめ

普段は住民の憩いや運動の場として認識している公園ですが、防災公園として整備することにより、いざというときには命を守る場にもなります。大規模災害はいつ起こってもおかしくありません。もしものときに防災機能を備えた公園が近くにあれば、スムーズな避難や救助が可能になり、助かる可能性が高まります。国も交付金などで取り組みを支援しており、各地方公共団体による防災公園の整備は今後も進められていくでしょう。


編集:株式会社JVCケンウッド・公共産業システム マーケティング担当(2024年10月18日)

<参考資料・出典>
公園とみどり - 国土交通省
国営公園とは?都市公園とは? | 都市・公園 | 国土交通省 関東地方整備局
都市公園法改正のポイント| 国土交通省 都市局 公園緑地・景観課
都市公園法 | e-Gov 法令検索
災害対策基本法 | e-Gov 法令検索

※本資料は、公開掲載時点での情報であり、内容の完全性・正確性を保証するものではありません。
※本資料内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

お問い合わせはこちら
システムのご相談はお気軽にどうぞ

ページの先頭へ