コラム
防犯カメラのデータ保存期間の目安は?データを長期間保存するための方法についても解説
2025年8月21日

防犯カメラを設置する際、多くの方が悩むのが「録画したデータをどのくらいの期間保存すればよいのか」という点です。保存期間が短すぎては万が一の時に役立たず、長すぎてもコストや管理の手間が増大します。この記事では、防犯カメラのデータ保存期間に関する基本的な考え方から、設置場所別の目安、保存期間を延ばす具体的な方法まで、詳しく解説します。
目次
- 1 - 防犯カメラのデータ保存期間に法律の定めはある?
- 保存期間は設置者の判断に委ねられるのが基本
- 自治体によってはガイドラインが存在する
- 2 - 【設置場所別】防犯カメラのデータ保存期間の目安
- 戸建て・自宅は約1週間が目安
- マンション・アパートは1週間から1ヶ月程度
- コンビニ・店舗は1ヶ月から3ヶ月が一般的
- 工場・倉庫は半年から1年以上の場合も
- 金融機関では1年以上の長期保存も
- 3 - 防犯カメラの保存期間を決める4つの要素
- 記録媒体の種類と容量
- カメラの画質と解像度
- フレームレート(fps)の設定
- 設置するカメラの台数
- 4 - 主な記録媒体の種類と特徴
- HDD(ハードディスクドライブ)
- SSD(ソリッドステートドライブ)
- SDカード
- クラウドストレージ
- 5 - 防犯カメラの保存期間を延ばす3つの方法
- 容量の大きい記録媒体を利用する
- モーション検知録画を活用する
- カメラの画質やフレームレートを調整する
- 6 - データ保存で注意すべきプライバシー保護の観点
- 運用ルールを明確に定める
- 映像データの管理責任者を設置する
- 撮影対象者への配慮を忘れない
- 7 - まとめ
1 - 防犯カメラのデータ保存期間に法律の定めはある?
防犯カメラの映像は、犯罪捜査やトラブル解決の重要な手がかりとなります。そのため、データの保存期間について法的な決まりがあるのか気になる方も多いでしょう。ここでは、データ保存期間の法的な位置づけについて解説します。
保存期間は設置者の判断に委ねられるのが基本
結論から言うと、防犯カメラのデータ保存期間について、法律による一律の定めは存在しません。 そのため、保存期間は基本的に防犯カメラを設置する個人や企業の判断に委ねられています。ただし、これは無制限にデータを保存してよいという意味ではありません。撮影された映像には個人情報が含まれるため、設置目的を達成するために必要な最小限の期間に留めることが原則となります。
自治体によってはガイドラインが存在する
法律による定めはありませんが、各自治体が防犯カメラの設置・運用に関するガイドラインを設けている場合があります。これらのガイドラインでは、プライバシー保護の観点から保存期間の上限を定めていることが多く、例えば「おおむね1ヶ月以内」や「原則14日間」といった基準が示されています。 企業や個人が防犯カメラを設置する場合も、こうした自治体のガイドラインを参考に、社会通念上、適切な保存期間を設定することが望ましいでしょう。
自治体例 | ガイドラインに示される保存期間 |
---|---|
横浜市 | おおむね1ヶ月以内とし、不必要な画像は保存しない |
札幌市 | 原則として1ヶ月以内とし、期間後は速やかに消去する |
愛知県 | 設置目的を達成する範囲で、必要最低限の期間(最大1か月) |
警視庁 | 街頭防犯カメラシステムでは30日間保存 |
2 - 【設置場所別】防犯カメラのデータ保存期間の目安

防犯カメラの最適なデータ保存期間は、設置する場所や目的によって大きく異なります。ここでは、代表的な設置場所ごとに保存期間の目安を紹介します。
戸建て・自宅は約1週間が目安
個人宅の場合、家族が日常的に出入りするため、異変があれば比較的早く気付くことができます。そのため、保存期間は3日から1週間程度が一般的です。 長期旅行などで家を空ける期間が分かっている場合は、その日数以上をカバーできるように設定を調整するとより安心です。
マンション・アパートは1週間から1ヶ月程度
集合住宅では、住民だけでなく宅配業者や来客など不特定多数の人が出入りします。そのため、個人宅よりも少し長く、1週間から1ヶ月程度の保存期間が目安とされています。 ゴミの不法投棄やいたずら、住民間のトラブルなど、問題が発覚するまでに時間がかかるケースも想定し、余裕を持った期間設定が推奨されます。
コンビニ・店舗は1ヶ月から3ヶ月が一般的
多くの顧客が訪れるコンビニや店舗では、万引きや顧客とのトラブル、従業員の不正など、様々なリスクに対応する必要があります。問題が発生してから調査を開始するまでに時間がかかることも考慮し、1ヶ月から3ヶ月程度の保存期間が一般的です。 特に万引き被害などは、後日、常習犯であることが判明する場合もあるため、過去の映像を遡って確認できる期間を確保しておくことが重要です。
工場・倉庫は半年から1年以上の場合も
工場や倉庫では、製品への異物混入や盗難、作業工程でのトラブルなど、問題が発覚するまでに数ヶ月を要する場合があります。そのため、他の施設よりも長く、半年から1年、あるいはそれ以上の長期間データを保存するケースが多く見られます。 特に、製造した製品の賞味期限などと関連付けて保存期間を設定する企業もあります。
金融機関では1年以上の長期保存も
現金や重要な個人情報を扱う金融機関では、極めて高いセキュリティレベルが求められます。強盗や詐欺といった犯罪の証拠として映像が必要になる場合に備え、半年から1年、場合によってはそれ以上の長期間データを保存することが一般的です。
3 - 防犯カメラの保存期間を決める4つの要素
防犯カメラの録画データが実際にどのくらいの期間保存できるかは、いくつかの技術的な要素によって決まります。ここでは、保存期間に影響を与える主な4つの要素を解説します。
記録媒体の種類と容量
録画データを保存する媒体(レコーダー)の容量は、保存期間に最も直接的な影響を与えます。主流であるHDD(ハードディスクドライブ)の容量はTB(テラバイト)という単位で表され、この数値が大きいほど長期間の録画が可能です。容量がいっぱいになると、古いデータから自動的に上書きされて消えていきます。
カメラの画質と解像度
カメラの画質や解像度が高くなるほど、映像は鮮明になりますが、その分データ量も大きくなります。データ量が大きくなれば、同じ容量の記録媒体でも保存できる時間は短くなります。 例えば、フルHD(約200万画素)と4K(約800万画素)では、4Kの方がデータ量は格段に大きくなるため、保存期間は短くなります。証拠能力と保存期間のバランスを考慮して画質を設定することが重要です。
フレームレート(fps)の設定
フレームレート(fps)とは、1秒間に記録する静止画(コマ)の数のことです。この数値が高いほど映像は滑らかになりますが、データ量は増加します。 一般的に、テレビ放送が30fps、映画が24fpsです。防犯カメラでは、人の動きがカクカクせずに確認できる5fpsから15fps程度に設定されることが多いですが、この設定を低くすることでデータ量を抑え、保存期間を延ばすことができます。
設置するカメラの台数
1台のレコーダーに複数のカメラを接続する場合、カメラの台数が増えるほど記録するデータ量も増え、全体の録画可能時間は短くなります。 例えば、1TBのレコーダーでカメラ1台なら30日間保存できる場合、同じ設定でカメラを2台に増やすと保存期間は約15日になります。将来的にカメラを増設する可能性がある場合は、余裕を持った容量のレコーダーを選ぶ必要があります。
4 - 主な記録媒体の種類と特徴

防犯カメラの映像を録画・保存する媒体は、主に4つの種類に分けられます。それぞれのメリット・デメリットを理解し、用途に合ったものを選びましょう。
記録媒体 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
HDD(ハードディスクドライブ) | 防犯カメラ専用レコーダーに内蔵される最も一般的な記録媒体。 | 大容量の製品が多く、長期間の常時録画に適している。容量あたりの単価が比較的安い。 | 衝撃に弱く、故障のリスクがある。レコーダーの設置場所が必要。 |
SSD(ソリッドステートドライブ) | HDDの後に登場した媒体。可動部品がなく、高速な読み書き、耐衝撃性に優れる。 | 高画質の映像でもスムーズに保存可能。 振動や衝撃に強く、屋外設置や移動体にも適している。 | HDDと比べるとコストが高く、長時間録画や大量保存には不利。 |
SDカード | カメラ本体に挿入して録画する手軽な記録媒体。 | レコーダーが不要で、導入コストを抑えられる。コンパクトで設置が容易。 | 容量が小さく、長期間の保存には不向き。盗難や持ち去りのリスクがある。耐久性が低い。 |
クラウドストレージ | インターネット上のサーバーに映像データを保存するサービス。 | レコーダーが不要で、盗難や破損のリスクがない。スマホやPCでどこからでも映像を確認できる。 | 月額のサービス利用料がかかる。インターネット回線が必須。 |
5 - 防犯カメラの保存期間を延ばす3つの方法

「現在の保存期間では少し心もとない」と感じた場合、設定の見直しや機器の工夫によって保存期間を延ばすことが可能です。ここでは、代表的な3つの方法を紹介します。
容量の大きい記録媒体を利用する
最もシンプルで確実な方法は、現在使用しているものより容量の大きいHDDやSDカードに交換することです。あるいは、HDDを増設できるタイプのレコーダーであれば、HDDを追加することで保存容量を増やすことができます。 これにより、画質などの設定を変更することなく、録画時間を物理的に延ばすことが可能になります。
モーション検知録画を活用する
モーション検知(動体検知)とは、カメラの撮影範囲内で動きがあった時だけ録画する機能です。 人や車の往来が少ない場所では、この機能を活用することで、何も動きがない時間帯の録画をせず、記録容量を大幅に節約できます。これにより、実質的なデータ保存期間を大きく延ばすことができます。
カメラの画質やフレームレートを調整する
前述の通り、画質やフレームレートはデータ量に大きく影響します。もし、現在の画質設定がオーバースペックだと感じる場合は、解像度やフレームレートの数値を少し下げることで、データ量を抑え、保存期間を延ばすことができます。 ただし、下げすぎると肝心な場面で人物や文字が識別できなくなる可能性もあるため、実際の映像を確認しながら慎重に調整することが重要です。
6 - データ保存で注意すべきプライバシー保護の観点
防犯カメラの映像は、個人の顔や行動が記録された重要な個人情報です。そのため、データを保存・利用する際には、プライバシー保護の観点から細心の注意を払う必要があります。
運用ルールを明確に定める
誰が、どのような目的でカメラを設置し、映像を閲覧できるのかといった運用ルールを明確に定めておくことが非常に重要です。 保存期間や映像の取り扱い方法、外部提供(警察への協力など)の条件などを具体的に文書化し、関係者間で共有しておくことで、目的外利用や情報漏えいのリスクを低減できます。
映像データの管理責任者を設置する
録画データにアクセスできる権限を持つ「管理責任者」を定め、限定された担当者以外は映像を閲覧できないようにすることが望ましいです。レコーダーの設置場所を施錠管理したり、閲覧パスワードを設定したりするなど、物理的・システム的なアクセス制限を設けることも有効な対策です。
撮影対象者への配慮を忘れない
防犯カメラを設置する際は、「防犯カメラ作動中」といったステッカーを掲示し、撮影していることを周囲に知らせることが基本です。また、隣接する住宅の敷地内など、必要のないプライベートな空間が映り込まないように、カメラの画角を調整するなどの配慮も不可欠です。
7 - まとめ
防犯カメラのデータ保存期間には法的な義務はありませんが、設置場所や目的に応じて最適な期間を設定することが、効果的な防犯対策とプライバシー保護の両立に繋がります。一般的に、個人宅では1週間、店舗や集合住宅では1ヶ月以上が目安とされています。記録媒体の容量やカメラの設定によって保存可能な日数は変動するため、自社の環境に合ったシステムを選び、適切な運用ルールを定めて活用することが重要です。
編集:株式会社JVCケンウッド・公共産業システム マーケティング担当(2025年8月)
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<参考資料・出典>
防犯カメラ(横浜市防犯カメラの設置及び運用に関するガイドライン) 横浜市
防犯カメラ・ガイドライン/札幌市
「防犯カメラの設置及び運用に関するガイドライン」の策定について - 愛知県
街頭防犯カメラシステム 警視庁