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デジタル田園都市国家構想とは? デジタル技術による地方創生を解説

デジタル田園都市国家構想

現代の地方都市は、少子高齢化や人口減少によりインフラの維持が困難になるなど、さまざまな問題を抱えています。デジタル田園都市国家構想は、デジタル技術の活用によって地方の社会課題を解決するために策定されたものです。本記事では、デジタル田園都市国家構想の考え方や具体的な内容について解説していきます。

目次

  1. 1 - デジタル田園都市国家構想とは?
  2. 地方の課題解決にはデジタル化が有効
  3. 2 - デジタル田園都市国家構想に基づいた取り組み事例
  4. 「relay」(株式会社ライトライト)
  5. 「NAGAOKA WORKER」(株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS)
  6. デジタル田園都市国家構想推進交付金
  7. 3 - デジタル田園都市国家構想におけるデジタル技術の役割
  8. スマートシティの実現
  9. 行政サービスの向上
  10. そのほかの役割
  11. 4 - デジタル田園都市国家構想実現のための基礎条件
  12. デジタル田園都市国家構想における基礎条件の整備
  13. 全国的な展開に向けた課題
  14. 5 - 自治体・議会向けソリューションの紹介
  15. 6 - まとめ

1 - デジタル田園都市国家構想とは?

デジタル田園都市国家構想とは?

デジタル田園都市国家構想とは、日本政府が推進する地方創生の一環として2021年に始動した計画です。日本では少子高齢化や人口減少、東京圏への一極集中、地方の過疎化、地域産業の空洞化などにより、大都市と地方との間で所得や労働環境、インフラの整備などにさまざまな格差が生じています。このような課題をデジタル技術の活用で解決しようとするのが、デジタル田園都市国家構想です。
デジタル田園都市国家構想が目指すのは、「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」の実現です。地方における雇用の創出、少子化対策、固有の魅力と利便性を兼ね備えた地域づくりを促進するために、デジタルインフラやデジタル人材、デジタル共生社会といった基礎的な条件の整備が進められています。

地方の課題解決にはデジタル化が有効

日本の出生率は1970年代半ばから長期的に減少傾向にあり、若年層が都市部へ流出する現象も重なり、地方の過疎化が進んできました。過疎化により地方自治体の税収が減少し、インフラや行政サービスの維持が困難になるほか、医療過疎や交通空白といった問題も生じています。その結果、地方で暮らすことが困難となり、さらに都市部へ人口が流出し、地方の衰退が加速するという状況に陥っています。
デジタル技術はこのような状況に歯止めをかけ、地方創生の手段となり得ると期待されています。例えば、ネットワーク環境が整備されれば、テレワークや遠隔教育、遠隔医療が可能となり、地方への移住を促しやすくなります。また、スマート農業が導入されれば農家の後継者問題の解決につながり、MaaS(移動をサービスとして捉える概念)が導入されれば交通空白の問題解決にも寄与します。このように、デジタル化は地方においてこそ高い効果を発揮することが期待されています。

2 - デジタル田園都市国家構想に基づいた取り組み事例

政府が定める「デジタル田園都市国家構想総合戦略」では、2023~2027年度までの戦略として、目指す方向性、評価指標、施策内容などが示されており、重点事項として「地方に仕事をつくる」「人の流れをつくる」「結婚・出産・子育ての希望をかなえる」「魅力的な地域をつくる」という4つの取り組みを推進しています。
デジタル田園都市国家構想に基づく具体的な取り組みには、次のような事例があります。

「relay」(株式会社ライトライト)

「relay」は、事業を譲渡したい事業者と、事業を譲り受けたい個人・法人をつなぐプラットフォームです。これにより、地方の個人商店などでも事業継承が行いやすくなり、地方で働きたい人々を呼び込むことにつながっています。

<参考リンク>「オープンな事業承継」で地域の小規模事業者の後継者探し|Digi田(デジでん)甲子園2023

「NAGAOKA WORKER」(株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS)

「NAGAOKA WORKER」は、長岡に暮らしながら首都圏企業などに完全リモートワークで勤務できるワークモデルです。市外の企業に対して長岡へのサテライトオフィスの設置を支援し、UIJターンを含む多様な就業機会の創出と企業誘致を促進しています。

<参考リンク>NAGAOKA WORKER|冬のデジ田甲子園|Digi田(デジでん)甲子園 2023

デジタル田園都市国家構想推進交付金

内閣府では、「デジタル田園都市国家構想推進交付金」を設け、地方自治体の社会課題解決・魅力向上への取り組みを支援しています。令和6年度当初予算では1,000億円が計上され、交付金は取り組みの対象や目的によって、次の4つに分類されます。

1.デジタル実装タイプ
公的サービスの高度化・効率化の推進のため、デジタル実装に必要な経費などを支援
対象事業の例:遠隔医療、地域DXアプリ、書かない窓口の導入など
2.地方創生推進タイプ
観光や農林水産業の振興などの取り組みを支援
対象事業の例:東京圏からのUIJターンの促進、道路・汚水処理施設・港湾などの一体的な整備など
3.地方創生拠点整備タイプ
観光や農林水産業の振興などにおける拠点施設の整備を支援
対象事業の例:スタートアップ支援拠点、子育て支援施設、道の駅に隣接した観光拠点の整備など
4.地域産業構造転換インフラ整備推進タイプ
産業構造転換を加速させる大規模な生産拠点整備のため、関連するインフラの整備を支援
対象事業の例:半導体工場の整備に必要な工業用水、下水路、道路の整備など

3 - デジタル田園都市国家構想におけるデジタル技術の役割

デジタル田園都市国家構想におけるデジタル技術の役割

ここでは、デジタル技術が地方創生や行政サービスの向上に果たす役割を見ていきます。

スマートシティの実現

スマートシティとは、ICTなどの技術を活用し、地域のマネジメント(計画、整備、管理・運営)を高度化することで、地域課題の解決と新たな価値の創出を継続的に行う持続可能な地域のことを指します。スマートシティにおけるサービスの例として、遠隔教育、ネットワークカメラによる地域の見守り、災害情報の迅速な取得と発信、自動走行や自動配送、エネルギーの最適管理、キャッシュレス化などが挙げられ、これらの実現にはデジタル化が不可欠です。

行政サービスの向上

さまざまな手続きや書類申請がオンラインで行えるようになるほか、申請書を記入せずに各種手続きが可能な「書かない窓口」、障害や高齢により移動が困難な人へのビデオ通話による遠隔相談、オンライン市民講座の開催などが実現できるようになります。

そのほかの役割

デジタル化は、地方に仕事や人の流れを生み出すためにも有効です。企業のDXやスマート農業の導入は、中小企業や農業の生産性を高め、新たな雇用を生み出し、事業継承のハードルを下げる効果があります。さらに、ネットワーク環境が整ったテレワーク施設があれば、ワーケーションによる関係人口の創出、企業誘致、移住促進といった効果も期待できます。

4 - デジタル田園都市国家構想実現のための基礎条件

デジタル田園都市国家構想実現のための基礎条件

デジタル田園都市国家構想における基礎条件の整備

自治体が具体的な施策を実施するためには、国によるデジタル化の推進と支援が不可欠です。「デジタル田園都市国家構想総合戦略」では、国が推進する「デジタル実装の基礎条件整備」の施策として、以下の取り組みが示されています。

デジタル基盤整備のための施策:
5G・データセンター・海底ケーブルなどのインフラ整備、マイナンバーカードの普及促進と利活用拡大など
デジタル人材の育成・確保のための施策:
人材育成プラットフォームの構築、職業訓練のデジタル分野の重点化、高等教育機関等におけるデジタル人材の育成など
誰一人取り残されないための施策:
高齢者などを対象にデジタル推進委員がデジタル機器・サービスの利用方法を教えるデジタル活用支援、デジタル共生社会の実現など

全国的な展開に向けた課題

デジタル実装のための基礎条件整備の実現にはさまざまな課題が存在します。以下に、懸念されているいくつかの課題を示します。

海底ケーブルの整備:
離島などでは初期整備費が多額になるだけでなく、保守管理や点検、補修といった維持管理が必要となります。
5Gの整備:
全国の人口カバー率は目標を達成。非居住地域を含むエリア整備、非常時における事業者間ローミング、自動運転やドローンを活用したプロジェクトとの連携などは、依然として課題です。
地方データセンター拠点の整備:
大都市圏に集中しているデータセンターを分散配置するため、拠点整備に向けた民間事業者への支援などを推進する必要があります。
デジタル推進委員の活動:
講習会などの活動機会が限られていること、活動モデルやサポート支援が不足していることなどから、活動へのハードルが高く、一定数において活動実績がない状況が生じています。情報交換やオンラインコミュニティ、事例、ナレッジの共有などが求められます。

5 - 自治体向けデジタル化ソリューションの紹介

地方議会では、住民への「開かれた議会」を推進するため、議会での討議過程の公開を、これまでの傍聴や議事録だけでなく、インターネットを通じてどこでも誰でも議会を視聴できるようにするため、議会配信の仕組みを導入する動きが進んでいます。
デジタル田園都市国家構想交付金の「デジタル実装タイプ」では、デジタル技術を活用した行政サービスの高度化・効率化推進の実装に必要な経費を支援しており、議会配信を行うために必要なシステムやソフトウェアの導入に対して、この交付金を活用する事例が増えています。

また、議場での発言を音声認識で字幕に変換し、それをインターネットで配信するとともに、傍聴席や庁舎内のモニターに表示することで、バリアフリーに配慮した行政の実現に活用する例も増えています。

6 - まとめ

高齢化や人口減少が進む中、地方で暮らすことが困難になってきています。大都市に人口を集約すれば、インフラの維持や充実した行政サービスが効率的に行えますが、多様性に富んだ地域ごとの魅力は失われてしまいます。地方において、その土地ならではの魅力を維持しながら、便利な暮らしを実現していくには、積極的にデジタル技術を活用し、さまざまな社会課題を解決していかなければなりません。デジタル田園都市国家構想は、そのための指針となるものであり、国と地方が一体となって取り組むべきことだと言えるでしょう。


編集:株式会社JVCケンウッド・公共産業システム マーケティング担当(2024年12月10日)

<参考資料・出典>
デジタル田園都市国家構想
デジタル田園都市国家構想|デジタル庁
地方創生
総務省|白書
総務省|報道資料|「デジタル田園都市国家インフラ整備計画(改訂版)」の公表

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