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持続可能な地域社会を支える交通・港湾の役割 ~新潟県交通政策局

インタビュー 持続可能な地域社会を支える交通・港湾の役割 新潟県 交通政策局 港湾振興課
(新潟県新潟市)

新潟県は本州日本海側最大の都市として産業や文化の中心として古くから繫栄。人やモノの移動を実現する交通の要が海路・陸路で築かれ発展を遂げてきました。開港150余年を迎えた新潟港は、現代では海運・航空・鉄道・高速道路といった交通網と連携し国内外との人的・物的交流に寄与しています。 本日は、新潟県交通政策局の脇様に、生活と産業の基盤としての港湾政策について、お話を伺いました。

目次

  1. プロフィール ~新潟県 交通政策局 港湾振興課の役割
  2. 新潟県の港湾について
  3. 物流を担う東港の開発
  4. 港湾におけるモーダルシフトの推進
  5. 「カーボンニュートラルポート」の実現に向けて
  6. BCP(事業継続計画)と港湾の役割
  7. 新潟県の魅力と将来構想
  8. インタビューを終えて

プロフィール ~新潟県 交通政策局 港湾振興課の役割

本日はよろしくお願いします。はじめに、交通政策局の役割を教えてください。

交通政策局というのは、ヒトとモノの流れをターゲットとしたセクションです。新潟県は広く、海岸線も長いので、幅広い交通(バス、鉄道、船舶、飛行機)を中心とした公共交通の維持拡充が重要です。都市部だけでなく、過疎地域での交通確保や、県や国を跨ぐ交通も支援しています。民間企業との連携が重要で、バス、鉄道、船舶、航空など、行政だけでは成り立たない部分を民間事業者と協働して政策展開を図っています。公共交通の維持拡充という観点から、我々の役割は県民の生活を支えることにあります。特に新潟県のように広範囲にわたる地域では、どの地域に住んでいても交通の確保が図られるよう取組を推進していくことが必要です。

その中で、港湾振興課の役割を教えてください。

港の振興、主にはコンテナ航路の維持拡充や、離島航路(佐渡、粟島)の維持などを担当しています。観光振興の観点からクルーズ船の寄港誘致も行っています。産業の拠点としての港湾利活用促進も重要です。港湾整備課と港湾振興課があり、港湾整備課は「ハード」面、港湾振興課は「ソフト」面を主としてそれぞれ担当しています。港湾振興課は、新潟港をはじめとした県内港を通じて地域経済を活性化させる役割を担っています。これには物流の効率化、観光誘致、地域の魅力を高める施策など、多岐にわたる取組が含まれます。

新潟県 交通政策局 港湾振興課 港湾企画振興班 脇 眞太朗 様
新潟県 交通政策局 港湾振興課 港湾企画振興班 脇 眞太朗 様

新潟県の港湾について

西港区(写真左)*新潟県交通政策局港湾整備課提供、東港区(写真右)
西港区(写真左)*新潟県交通政策局港湾整備課提供、東港区(写真右)

新潟港の特徴について教えてください。

新潟港には西港区(人流が中心)と東港区(物流が中心)があります。本州日本海側で最大のコンテナ取扱量を誇り、地政的に中国や韓国に近い立地が強みです。鉄道・道路網も整備され、近県や首都圏とのアクセスも充実しています。

新潟港は、本州日本海側最大の港湾としてその地位を維持しており、特に新潟東港は、国際的な物流拠点としての役割を果たし、港の周辺には多くの企業が集積しています。さらに、新潟港は観光の拠点としても重要で、佐渡金山が世界遺産となった佐渡島への航路や、クルーズ船の寄港が港のみならず周辺地域経済に大きな影響を与えています。

新潟港の取扱貨物や外貿航路について詳しく教えてください。

新潟港の取扱量は年間約17万TEUです(令和5年)。本州日本海側の他の港と比較しても圧倒的な取扱量を誇ります。TEUとは20フィートコンテナ換算での貨物量を表す単位です。

新潟港コンテナ取扱量
新潟港コンテナ取扱量

具体的にはどのような外貿航路がありますか?

新潟港の外貿航路としては、韓国の釜山港、中国の上海港との定期コンテナ航路があり、週に9便が就航しています。釜山港や上海港は国際物流のハブとしての役割を果たしており、そこから世界各地の港までを繋ぐ物流ネットワークを構築しています。

外貿定期航路と貨物動向
外貿定期航路と貨物動向

国内航路についても教えてください。

国内では、新潟港から直江津、ひびき、神戸、門司、博多などと接続する内航フィーダー航路が充実しています。この航路を利用することで、新潟で生産された製品(金属加工物など)を阪神方面や九州方面を経由して外国へ運ぶことが可能です。また、物流2024年問題に対して、長距離トラック国内輸送の代替として船舶輸送を利用する「モーダルシフト」が進められており、これにより物流の効率化と環境負荷の低減が図られています。

取扱貨物の動向についてはいかがですか?

新潟港の貨物動向についてですが、国・地域別では、輸入は中国(上海港および華南地域)からが多く、東南アジアからの輸入も増加しています。品目別では、輸出は「軽工業品」(紙やパルプ)や「特殊品」(再利用資材)が中心で、輸入は「金属加工品」(金属製品や電気機械)や「雑工業品」(資材、日用品など)が中心です。輸入と輸出の割合は約2:1で、輸入が多い状況です。

物流を担う東港の開発

新潟東港

東港区の開発について教えてください。

東港区は昭和44年(1969年)に掘込港として整備されました。掘込港とは、船舶を安定して受け入れ、安全に荷役作業ができるよう、内陸へ人工的に掘り込んだ方式の港のことです。この歴史ある港は、新潟県の経済発展に重要な役割を果たしてきました。

東港区にはどのような施設がありますか?

東港区には、本州日本海側で最大のコンテナターミナルが立地しています。これにより、大量の貨物を効率的に取り扱うことが可能となり、国内外の物流拠点として機能しています。また、国内最大級の火力発電所も東港区に位置し、LNG(液化天然ガス)船が定期的に接岸して燃料を供給しています。この発電所は地域のエネルギー供給に欠かせない存在です。

新潟東港コンテナターミナルの位置
新潟東港コンテナターミナルの位置

港湾施設の安全対策について教えてください。

東港区には大型ガントリークレーンが3基設置されており、船のコンテナの荷下ろしや荷積みが行われています。これらのクレーンが設置されている岸壁の一部は、地震対策として耐震設計が施されており、災害時にも安全に稼働できるようになっています。新潟港の安全性と信頼性は、このような施設設備によっても支えられています。 

大型ガントリークレーン

冬季の積雪対策についてはいかがですか?

新潟港の特徴の一つとして、積雪対策が挙げられます。東港区では、海水を散布しコンテナヤードに積もった雪を融雪する装置が整備されています。この装置により、冬季でもスムーズに物流が行えるようになっています。また、コンテナに積もった雪を自動的に削り取るゲートも設置されており、効率的な雪対策が講じられています。

海運と鉄道を連携する「オン・ドック・レール構想」について教えてください。

新潟港では、「オン・ドック・レール構想」に向けた検討も進められています。これは、コンテナを直接鉄道に積み込むシステムでこの構想により、陸上輸送と海上輸送の連携が強化され、物流効率が大幅に向上することが期待されています。

オン・ドック・レール構想
オン・ドック・レール構想

大型船への対応についてはどうですか?

近年、クルーズ船も大型化が進んでおり、大型クルーズ船は東港区に寄港しています。これにより、観光客の誘致にもつながっています。

東港区の今後の展望について教えてください。

新潟港の東港区は、物流とエネルギー供給の両面で重要な役割を果たしています。これからも、地域経済の発展と持続可能な物流の実現に向けて、積極的な取り組みを続けていきます。さらに、オン・ドック・レール構想の実現や、大型船の受け入れ能力の向上など、今後も新たな挑戦に取り組んでいきます。

港湾におけるモーダルシフトの推進

脇 眞太朗 様

港湾におけるモーダルシフトについて教えてください。

物流2024年問題に端を発した陸上物流の大きな動きは、トラックドライバーの残業規制などに起因する移送力の低下の懸念など負のイメージが先行しがちですが、一方でトラック輸送に代わる船舶輸送や、それを担う地方港の役割が注目されています。また、船舶輸送は陸上輸送のトラックよりもCO2排出量が少なく、持続可能な物流を実現しています。モーダルシフトの推進により、新潟港は環境負荷の低減と物流の効率化を両立させています。

利活用のため、どのような施策を展開していますか?

新潟港では充実したインセンティブ制度を設けており、荷主側のコスト削減に大きく貢献しています。トライアル補助から継続補助まで、全国トップクラスの支援制度を提供しています。また、新潟港の利用促進のために、様々な施策を展開しています。例えば、新たに航路を開設する際の支援や、物流業者との連携を強化しています。これにより、新潟港の利用が増加し、地域経済の活性化に寄与しています。

「カーボンニュートラルポート」の実現に向けて

新潟港 港湾脱炭素化推進計画

港湾における脱炭素化、および「カーボンニュートラルポート」について教えてください。

港湾における脱炭素化についてですが、トラック輸送に比べ、船舶での輸送は排出するCO2が約1/6から1/9とされています。これは企業における脱炭素化の取り組みにおいて非常に大きなメリットです。例えば、荷主企業が船舶を利用することで、CO2排出量を大幅に削減することができるという実証結果も出ています。

港湾地域の脱炭素に向けた具体的な取り組みについて教えてください。

新潟県では、令和6年3月に北陸地方で初の「港湾脱炭素化推進計画」を策定しました。計画の中では、カーボンニュートラル形成に向けた具体的な目標と事業が示されており、現在はこの計画に基づいて官民で連携した様々な脱炭素の取り組みを進めています。

港湾脱炭素化=カーボンニュートラルポート(CNP)への取り組み
港湾脱炭素化=カーボンニュートラルポート(CNP)への取り組み

新潟港のエネルギー供給拠点としての現状についてはいかがでしょうか?

新潟港では、エネルギー供給においても重要な役割を担っています。パイプラインが関東、東北、中部へ整備されており、エネルギーサプライチェーンの拠点として機能しています。具体的には、東港および直江津港では火力発電所の燃料としてLPGを供給しており、石炭などの化石燃料に比べて脱炭素化が図られています。

エネルギー拠点としての今後の取り組みについて教えてください。

将来的には、水素やアンモニアといった新エネルギーの供給拠点として取り組みを進めていきます。これにより、新潟港はさらなる脱炭素化を推進し、カーボンニュートラルポートとしての役割を果たすことを目指しています。地域経済の発展と環境保護を両立させるために、持続可能なエネルギーの普及に努めていきます。

BCP(事業継続計画)と港湾の役割

災害時における港湾の重要性について教えてください。

新潟港は災害時の太平洋港湾のバックアップ機能として、その重要性が高まっています。企業側の観点からも「BCP(事業継続計画)」におけるサプライチェーン維持として新潟港に注目が集まっています。

太平洋側港湾のバックアップ港としての優位性
太平洋側港湾のバックアップ港としての優位性

具体的な実績について教えてください。

具体的な実績として、平成23年に発生した東日本大震災の際には、東北太平洋側の港が機能停止・低下したため、代替港として新潟港での荷揚げが利用されました。震災前の平成22年には19.2万TEUだった取扱量が、震災後の平成23年には23.1万TEUと約4万TEU増加しましたが、新潟港はこれをしっかりと捌いた実績があります。

具体的にはどのような物流ルートを検討していますか?

首都直下地震等の発生時に備え、これまで京浜港や阪神港で荷揚げしてきた部品メーカーなどの企業が、サプライチェーン維持のために新潟港を検討するようになっています。新潟港は被災時の代替輸送ルートとしての役割を担うことが求められています。また、国内輸送においても、太平洋側ルートの代替として、九州や関西地方から新潟港を経由し、東北地方や関東地方への物流ルートが有用と考えています。

被災した際には、どういう物流ルートを構築できるかが重要であり、新潟港は、企業だけでなく国も太平洋側災害時の代替輸送ルートとしての活用を示しています。平時の物流だけでなく、災害時の物流にも対応できるように行政だけでなく、民間企業と一体となって備えることが重要です。

新潟港の強みは何ですか?

新潟港の強みは、過去の実績と迅速な対応力、新潟を起点とした各地方への良好なアクセスです。東日本大震災の際の実績からも分かるように、急激な需要増加にも対応できる能力があります。また、新潟港は災害時のバックアップ機能としても非常に重要な役割を果たしており、企業のBCP対策の一環としても評価されています。

今後の展望について教えてください。

今後も新潟港は、災害時のバックアップ機能を強化し、企業のBCP対策に貢献していきます。新たな物流ルートの構築やインフラの整備を進め、地域経済の発展と持続可能な物流の実現を目指していきます。

新潟県の魅力と将来構想

新潟県の魅力と将来構想

新潟県の将来構想について教えてください。

新潟港を中心とした「物流の拠点」、離島や国内航路の「人流の拠点」としての役割だけでなく、クルーズ船の誘致や佐渡金山などの観光資源をアピールしています。また、港の利活用促進のために荷役事業者・運送事業者・民間企業と連携し、産業発展を目指しています。新潟港の魅力は、多様な物流ネットワークと豊かな観光資源にあります。

将来的には、新潟港を中心に地域経済をさらに活性化させるため、新しい航路の開設やインフラの整備を進めていきます。我々の目指す姿は、新潟港を中心とした地域の活性化と持続可能な発展です。これには、産業の振興だけでなく、環境保護や地域社会との連携も含まれます。地域経済の発展を支えるために、新たな航路の開設やインフラの整備、環境に配慮した取り組みを推進しています。

新潟県の魅力についても教えてください。

新潟県は、その豊かな自然環境と多様な文化が魅力です。新潟市には「朱鷺メッセ」があり、これは西港の中心的施設として港湾利活用の目的で開発されました。本格的な展示場、大小13の会議室、ホテルなどが一体化した複合一体型コンベンション施設で、産業や文化・学術など多方面で年間を通して数多く利用されています。また、新潟のシンボルである「朱鷺メッセ」は、「にぎわい創出」の拠点でもあります。この施設では、産業イベントや文化イベント、学術会議などが開催され、地域の交流の場として機能しています。

  新潟県は、四季折々の美しい自然景観が広がっています。冬の雪景色や春の桜、夏の海、秋の紅葉など、季節ごとに異なる魅力を楽しむことができます。また、新潟は美味しい食材の宝庫でもあります。新潟米や日本酒、海の幸、山の幸など、食の楽しみも豊富です。

脇 眞太朗 様

将来的な展望について教えてください。

新潟県の将来展望としては、持続可能な地域社会の実現が重要です。これには、環境保護と経済発展の両立が不可欠です。私たちは、新潟港を中心に地域の魅力を高め、国際競争力を強化するための取り組みを進めています。また、新潟港をハブとした国際物流の強化や、新たな観光資源の開発にも力を入れています。
さらに、新潟県は地域のコミュニティと連携し、住民の生活の質を向上させるための取り組みを進めています。これは、交通インフラの整備や公共サービスの充実、教育や医療の環境改善など、多岐にわたります。地域住民が安心して生活できる環境を整えることが、私たちの使命です。
新潟港の将来構想としては、物流と観光の両面での発展を目指しています。これには、新たな航路の開設やインフラ整備、環境への配慮が含まれます。また、地域との連携を強化し、持続可能な地域社会の実現を目指しています。新潟港を中心に、地域経済の活性化と国際競争力の強化を図るための取り組みを進めています。 

新潟県庁

新潟県ならびに新潟港の益々の発展をお祈りしています。本日はお忙しい中、有難うございました。

インタビューを終えて

新潟港は明治元年に日本の開港五港の一つとして世界に開かれた貿易港であり、開港から150余年の歴史があります。今回取材にあたり「新潟市歴史博物館みなとぴあ」を訪ね、信濃川河口の開削(現在の西港区)や水運など、新潟港の歴史に触れてきました(写真下)。新潟県には、他にも直江津、両津(佐渡島)など歴史ある港があり、自然や食を楽しみつつ訪ねてみたいと思いました。

新潟市歴史博物館みなとぴあ
新潟市歴史博物館みなとぴあ

インタビューに応対いただいた脇様は、港湾振興のため県内・近県だけでなく全国へ赴くそうで、お話の中で新潟港の利活用をアピールする『ポートセールス』への熱意がとても印象的でした。

<取材・資料ご協力>
新潟県交通政策局 港湾振興課
所在地 新潟市中央区新光町4番地1
●記載の法人・団体名・組織名・所属・肩書などは、全て取材時点のものです。

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