ホーム > Media Site > 防犯カメラの顔認証技術とは?導入メリットと活用方法を徹底解説

防犯カメラの顔認証技術とは?導入メリットと活用方法を徹底解説

防犯カメラの顔認証技術とは?導入メリットと活用方法を徹底解説

近年、セキュリティ意識の高まりとともに、防犯カメラの性能は飛躍的に向上しています。特に注目されているのが、AI技術を活用した「顔認証システム」を搭載した防犯カメラです。従来の録画・再生機能に加え、人物を特定できる顔認証技術は、店舗やオフィス、工場など様々な場所でより高度な防犯対策や業務効率化を実現する可能性を秘めています。
しかし、「顔認証とは具体的にどのような技術なのか」「導入することでどのようなメリットがあるのか」「課題や注意点はないのか」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、防犯カメラにおける顔認証システムの基本的な仕組みから、導入のメリット・デメリット、具体的な活用方法、導入に向けた準備や手順について、分かりやすく解説します。

目次

  1. 1 - 防犯カメラの顔認証システムとは?
  2. 顔認証と顔認識の違い
  3. 顔認証システムの仕組み
  4. 2 - 防犯カメラに顔認証システムを導入するメリット
  5. セキュリティレベルの向上
  6. 入退室管理の効率化
  7. 人件費の削減
  8. マーケティングデータとしての活用
  9. 3 - 防犯カメラの顔認証システム導入における課題
  10. 認証精度の問題
  11. プライバシーと個人情報保護
  12. なりすましのリスクと対策
  13. 4 - 顔認証システムの具体的な活用事例
  14. 不審者や万引きの検知
  15. 従業員の健康状態の確認
  16. 迷子や行方不明者の捜索
  17. 5 - 顔認証システム導入のための準備と手順
  18. 要件定義と目的の明確化
  19. 予算計画の立て方
  20. 従業員への説明と協力体制
  21. 6 - まとめ:安心・安全な環境づくりに貢献する顔認証システム

1 - 防犯カメラの顔認証システムとは?

防犯カメラの顔認証システムとは、カメラで撮影した映像から人物の顔を検出し、あらかじめデータベースに登録された顔情報と照合することで個人を識別するシステムです。この技術は、人工知能(AI)の一分野であるディープラーニング(深層学習)の発展により、認証精度が大幅に向上し、実用化が進んでいます。
従来の防犯カメラが主に事件・事故発生後の状況確認や証拠撮影を目的としていたのに対し、顔認証システムを搭載した防犯カメラは、リアルタイムでの不審者検知や特定人物の入退室管理などの多角的な運用が可能です。この進化により、防犯対策の強化だけでなく、業務の効率化や新たな価値創出にも貢献する技術として期待されています。

顔認証と顔認識の違い

「顔認証」と似た言葉に「顔認識」があります。これらは混同されやすいですが、技術的な意味合いは異なります。
「顔認識」とは、画像や映像の中から顔を検出する技術です。カメラに映った人物の顔がどこにあるのかを見つけ出し、顔の領域を特定します。一方、「顔認証」とは、顔認識によって検出された顔が「誰であるか」を識別する技術です。事前に登録された顔のデータと照合し、本人確認や特定を行います。
つまり、顔認識は顔を見つける技術であり、顔認証はその顔が誰なのかを特定する技術、という関係性です。顔認証システムは、まず顔認識を行い、その後に顔認証のプロセスを実行します。

このように、顔認識は顔認証を実現するための基礎技術といえます。

顔認証システムの仕組み

防犯カメラにおける顔認証システムは、一般的に以下のステップで処理が行われます。
まず、カメラが撮影した映像から、顔認識技術を用いて人物の顔を検出します。この際、AIが顔の輪郭や目、鼻、口といったパーツの位置関係を学習し、顔の領域を特定します。
次に、検出された顔から、目や鼻の形、顔の輪郭など、個人を識別するための特徴点を抽出します。この特徴点のパターンは「顔特徴量」と呼ばれ、数値データとして扱われます。最新のシステムでは、AIが非常に多くの特徴点を抽出し、高精度な識別を可能にしています。
そして、抽出された顔特徴量を、あらかじめシステムに登録されている従業員や顧客、あるいは不審者などの顔特徴量データベースと照合します。この照合プロセスにより、検出された顔がデータベース内のどの人物と一致する(あるいは一致しない)かを判定します。
最後に、照合結果に基づいて、システムは事前に設定されたアクションを実行します。例えば、登録された従業員であれば入室を許可し、未登録者やブラックリストに登録された人物であれば警告を発する、といった対応が可能になります。
これらの処理は瞬時に行われ、リアルタイムでの人物特定や対応を可能にしています。

2 - 防犯カメラに顔認証システムを導入するメリット

防犯カメラに顔認証システムを導入するメリット

防犯カメラに顔認証システムを導入することは、単に映像を記録する以上の多くのメリットをもたらします。セキュリティの強化はもちろんのこと、業務効率の改善やコスト削減、さらにはマーケティングへの応用も期待できます。ここでは、主なメリットを4つの観点から解説します。

セキュリティレベルの向上

顔認証システムの最大のメリットは、セキュリティレベルの大幅な向上です。ICカードや鍵のように紛失・盗難・貸与のリスクがある認証方法とは異なり、「顔」という生体情報を用いるため、なりすましが非常に困難です。これにより、部外者の不正侵入を効果的に防ぐことができます。
また、要注意人物やブラックリストに登録された人物がカメラに映った際に、システムが自動的に検知し、管理者に即座に通知することも可能です。これにより、事件やトラブルを未然に防ぐための迅速な対応が期待できます。例えば、過去に万引きを行った人物が再来店した場合、従業員にアラートを送り、注意を促すといった運用が考えられます。このように、顔認証システムは、より高度でアクティブなセキュリティ体制の構築に貢献します。

入退室管理の効率化

オフィスや工場、研究所など、特定のエリアへの入退室管理においても、顔認証システムは大きなメリットを発揮します。従来のカードキーや暗証番号による管理では、カードの発行・再発行の手間や紛失・忘却のリスク、暗証番号の漏洩といった課題がありました。
顔認証システムを導入すれば、従業員は文字通り「顔パス」で入退室できるようになります。これにより、カードを持ち運ぶ手間がなくなるだけでなく、受付業務の省人化や、誰がいつ入退室したかのログ管理の自動化も実現できます。特に、ハンズフリーでの認証が可能なため、両手が塞がっている場合でもスムーズな入退室が可能です。これにより、利便性の向上と管理業務の効率化を同時に達成できます。

工場での防犯カメラ設置については、こちらの記事も合わせてご参照ください。

人件費の削減

顔認証システムの導入は、人件費の削減にも繋がる可能性があります。例えば、従来警備員が行っていた不審者の監視や特定人物の捜索といった業務の一部を、顔認証システムが代替または支援することができます。24時間365日、人間の集中力に左右されずに監視を続けることができるため、警備の質を維持しつつ、人的リソースをより重要な業務に振り分けることが可能になります。
また、前述の入退室管理の自動化により、受付担当者やセキュリティゲートの管理人件費を削減できるケースもあります。もちろん、全ての人的警備を代替できるわけではありませんが、システムと人間が協調することで、より効率的かつ経済的なセキュリティ体制を構築できるでしょう。

マーケティングデータとしての活用

防犯カメラの顔認証システムは、セキュリティ目的だけでなく、マーケティングデータの収集・分析ツールとしても活用できます。来店客の年齢層や性別といった属性情報を(個人を特定しない形で)推定し、統計データとして蓄積することが可能です。これにより、どのような顧客層が多く訪れているのか、時間帯や曜日によって客層に変化はあるのか、といった分析が可能になり、商品陳列の最適化やターゲットを絞った販促活動に役立てることができます。
さらに、事前に同意を得た上でVIP顧客の顔情報を登録しておけば、来店時にシステムが自動的に認識し、スタッフがいち早く特別な対応をすることも可能になります。これにより、顧客満足度の向上やロイヤルティの強化に繋げることができます。ただし、マーケティング目的で顔認証システムを利用する際は、個人情報保護への十分な配慮と、データの適切な取り扱いが不可欠です。

顔認証の活用については、こちらのページも合わせてご確認ください。

3 - 防犯カメラの顔認証システム導入における課題

防犯カメラの顔認証システム導入における課題

顔認証システムは多くのメリットを提供する一方で、導入にあたってはいくつかの課題や注意点を理解しておく必要があります。認証精度、プライバシー保護といった主要な課題と、それらに対する考え方や対策について解説します。これらの課題を事前に把握し、適切な対策を講じることで、顔認証システムをより安全かつ効果的に活用することができます。

認証精度の問題

顔認証システムの認証精度は年々向上していますが、100%完璧ではありません。いくつかの要因によって、認証エラー(本人を他人と誤認する、または本人を認証できない)が発生する可能性があります。
主な要因としては、照明条件(暗すぎる、明るすぎる、逆光など)、顔の向きや角度、表情の変化、マスクや眼鏡、帽子の着用、経年による顔の変化(加齢、髪型の変化など)が挙げられます。特に、マスク着用率が高くなった近年では、マスク着用時でも高精度な認証が可能なシステムの需要が高まっています。
対策としては、設置場所の照明環境を最適化する、複数の角度から撮影可能なカメラを設置する、AIの学習が進んだ最新の認証エンジンを搭載したシステムを選ぶ、といったことが考えられます。また、運用開始前に十分なテストを行い、実環境での認証精度を確認することが重要です。

プライバシーと個人情報保護

顔認証システムで取り扱う顔データは、個人情報保護法における「個人識別符号」に該当し得る重要な情報です。そのため、システムの導入・運用にあたっては、プライバシーへの配慮と個人情報保護法をはじめとする関連法規の遵守が不可欠です。
具体的には、顔データを収集・利用する目的を明確にし、事前に従業員や顧客に対してその目的、データの取り扱い方法、保存期間などを明示し、原則として同意を得る必要があります。また、収集した顔データは、不正アクセスや漏洩、改ざんが起きないよう、厳重なセキュリティ対策を講じた上で管理しなければなりません。
総務省・経済産業省が公表している「カメラ画像利活用ガイドブック」や個人情報保護委員会が公表している「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」などを参考に、適切な運用体制を構築することが重要です。

防犯カメラと個人情報保護については、こちらのページも合わせてご確認ください。

なりすましのリスクと対策

顔認証は生体情報を用いるため、ICカードなどと比較してなりすましが困難とされていますが、全くリスクがないわけではありません。例えば、高精細な写真や動画、あるいは精巧に作られた3Dマスクなどを用いて認証を試みる、いわゆる「なりすまし攻撃」の可能性が指摘されています。
これに対する対策技術も進化しており、「ライブネス検知(生体検知)」と呼ばれる機能が注目されています。これは、カメラに映っているのが実際の生きた人間なのか、それとも写真や動画のような偽物なのかを判別する技術です。まばたきや微細な顔の動き、肌の質感などを分析することで、なりすましを見破ります。
より高度なセキュリティが求められる場合は、顔認証だけでなく、ICカードやパスワードなど、他の認証方法と組み合わせる「多要素認証」を導入することも有効な対策となります。システムの選定時には、これらのなりすまし対策機能の有無や性能も確認するとよいでしょう。

4 - 顔認証システムの具体的な活用事例

顔認証システムの具体的な活用事例

防犯カメラの顔認証システムは、その高い識別能力と即時性から、様々なシーンで活用が期待されています。ここでは、具体的な活用事例をいくつかご紹介します。これらの事例は、実際にどのような場面で顔認証技術が役立つのかをイメージする上で参考になるでしょう。

不審者や万引きの検知

あらかじめデータベースに登録された不審者や万引き常習者の顔をリアルタイムで照合することで、来店と同時に対象者を即座に検知し、警備スタッフへ自動的にアラートを送信できます。これにより、現場では迅速な対応が可能となり、被害の未然防止に大きく貢献します。また、複数の店舗や施設が連携して情報を共有する取り組みも広がっており、地域全体の防犯意識とセキュリティ効果の向上が期待されています。こうした仕組みは、犯罪の抑止にとどまらず、現場スタッフの負担軽減や店舗運営の効率化にも寄与しています。

従業員の健康状態の確認

近年、顔認証システムは出退勤管理だけでなく、従業員の健康状態の確認にも活用されています。顔から得られる生体情報をもとに、体温やストレスレベルを可視化するソリューションが登場しており、企業の健康経営をサポートしています。特に、新型コロナウイルスの影響で非接触の健康チェックが求められるようになり、顔認証による検温や体調異常の早期検出が重要視されるようになりました。こうしたシステムの導入により、従業員の安全確保と感染症対策の両立が可能となっています。

迷子や行方不明者の捜索

大型の商業施設やイベント会場などでは、顔認証システムを活用して迷子や行方不明者の早期発見が行われています。例えば、保護者が子どもの顔写真をシステムに登録することで、監視カメラと連動して該当者の移動履歴を追跡することができます。これにより、施設内での所在特定が迅速に行え、早期の保護が可能となります。特に、災害時や混雑時には迷子発生のリスクが高まるため、このような技術の導入は利用者の安心感を大きく高め、施設側の信頼性向上にもつながっています。

5 - 顔認証システム導入のための準備と手順

顔認証システムを導入し、その効果を最大限に引き出すためには、事前の準備と計画的な手順が不可欠です。単にシステムを導入するだけでなく、自社の課題や目的に合わせて最適な形で運用できるよう、慎重に進める必要があります。ここでは、導入に向けた主要なステップについて解説します。

要件定義と目的の明確化

顔認証システム導入の最初のステップは、何のために導入するのか、どのような課題を解決したいのかという「目的」を明確にすることです。例えば、「オフィスへの不正侵入を防ぎたい」「店舗での万引きを抑止したい」「従業員の勤怠管理を効率化したい」など、具体的な目的を設定します。
目的が明確になったら、それを達成するために必要な機能や性能、いわゆる「要件」を定義します。必要な認証精度はどの程度か、対応すべき人数規模は、既存のシステムとの連携は必要か、予算の上限は、といった項目を具体的に洗い出します。この要件定義が曖昧だと、導入後に「期待した効果が得られない」「不要な機能にコストをかけてしまった」といった事態になりかねません。関係各部署と十分に協議し、具体的な要件をリストアップすることが重要です。

予算計画の立て方

顔認証システムの導入には、初期費用と運用費用(ランニングコスト)が発生します。予算計画を立てる際には、これらの費用を総合的に考慮する必要があります。
初期費用としては、顔認証カメラ本体の購入費、顔認証ソフトウェアのライセンス費、顔データを保存・処理するためのサーバーやネットワーク機器の購入・設置費、システム構築や設定作業にかかる費用などが挙げられます。
運用費用としては、ソフトウェアの年間ライセンス更新料、サーバーやネットワーク機器の保守費用、システムメンテナンス費用、電気代などが考えられます。クラウド型のサービスを利用する場合は、月額または年額の利用料が発生します。
これらの費用項目を洗い出し、複数のベンダーから見積もりを取得して比較検討することが大切です。費用対効果を考慮し、自社の予算規模に見合ったシステムを選定しましょう。また、将来的な拡張性や機能追加の可能性も視野に入れ、長期的な視点で予算計画を立てることが望ましいです。

従業員への説明と協力体制

顔認証システムをスムーズに導入し、効果的に運用するためには、従業員の理解と協力が不可欠です。特に顔というセンシティブな個人情報を扱うため、従業員が不安や抵抗を感じないよう、丁寧な説明とコミュニケーションが求められます。
まず、システム導入の目的(セキュリティ向上、業務効率化など)や、それによって従業員が得られるメリットを具体的に説明します。次に、顔データの取り扱い方法、プライバシー保護のための対策、データの保存期間や廃棄ルールなどを明確に伝え、同意を得るプロセスを踏むことが重要です。
また、システムの操作方法やトラブル発生時の対応フローなど、運用に関するルールを策定し、従業員に周知徹底することも必要です。説明会を実施したり、質疑応答の機会を設けたりすることで、従業員の疑問や懸念を解消し、協力的な体制を築くよう努めましょう。システム導入は、技術的な側面だけでなく、組織的な取り組みとしても捉えることが成功の鍵となります。

6 - まとめ:安心・安全な環境づくりに貢献する顔認証システム

防犯カメラの顔認証システムは、AI技術の進化により、セキュリティ強化、業務効率化、そして新たな価値創造に貢献する強力なツールとなっています。導入を検討する際は、そのメリットだけでなく、認証精度やプライバシー保護といった課題も理解し、適切な対策を講じることが重要です。


編集:株式会社JVCケンウッド・公共産業システム マーケティング担当(2025年6月)

<参考資料・出典>
「カメラ画像利活用ガイドブックver3.0」を策定しました (METI/経済産業省)
個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)|個人情報保護委員会

※本資料は、公開掲載時点での情報であり、内容の完全性・正確性を保証するものではありません。
※本資料内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

お問い合わせはこちら
システムのご相談はお気軽にどうぞ

ページの先頭へ