『登録有形文化財』大講堂音響設備の不具合解消と要望の実現
適材適所と音場測定で、高齢者にも優しい音響空間に改善
お醤油の町として全国的に知られる千葉県野田市の歴史的建築物「興風会館」。大講堂の音響設備更新をJVCケンウッド・公共産業システム(以下:(JKPI))にて承りました。
改修の背景、効果などについて公益財団法人興風会の圓崎様にお話を伺いました。
導入の背景
既存の音響設備の性能が十分でない上に、老朽化が進んでいました。音質は低音と高音が出ていない感じで、利用者からも「声が聞き取りづらい」「音が良くない」といった改善を求める意見をたくさん承っていました。また観客席の全てまで音が行き渡らないという環境でもありました。
更にマイクにいたっては、有線マイクを多用していたため、コード断線のリスクや取り回しの煩わしさに加え、ノイズやハウリングにも悩まされていました。
設備の更新について(JKPI)に相談することになり、担当者に状況と課題・要望などをお伝えしたところ、課題解決と要望の実現についてとても分かりやすく説明いただき、親身になった丁寧な対応が大変良い印象でした。
導入のポイント
こちらの要望をいろいろと汲み取って頂いた上で、担当者からは松竹梅的に3パターンの更新を提案いただきました。提案の資料は写真や図表による構成でわかりやすく、私たちもスムーズに検討を進めることが出来ました。決定までには何度か説明をお願いすることもありましたが、担当者にはその都度丁寧に対応いただき感謝しています。
また、更新において音場測定を実施いただいたことで、「音が良くない・声が聞き取りづらい・全ての席に音が行き渡らない」といった感覚に頼っていた状況の改善が、数値とグラフで見える形で確認することが出来ました。相応の費用はかかることですが、このようなサービスを提供する施設では必要なことだと思います。
更に、定期的なメンテナンスサービスに直接対応している(JKPI)の体制も、採用を決定したポイントでした。
更新後、ワイヤレスマイクにノイズが入るトラブルが起きました。担当者が直ぐに来館され、使用チャンネルの再設定でこの問題を解決して頂けました。一方で、同様の現象が起きたときの対処方法を丁寧に説明して頂きましたので、その後も安心して使用できています。
導入の効果
講演などのスピーチがとても聞き取りやすくなり、4F席でも問題なく聞こえるようになりました。利用者からも大変好評です。また、有線マイクをワイヤレスにした利点は大きく、取り回しだけでなく利用者にとっての制約も大幅に軽減することが出来ました。
悩みの種であったマイクのハウリングは、ハウリングサプレッサーの導入で軽減され、それまでは無かった跳ね返りスピーカーをステージ両袖に増設したことで、話し手が適度な声量で発することが出来るようになり、快適な音響設備に改善しました。
ワイヤレスマイクが充電式なのも勝手が良いですね。万が一、充電池が切れた場合でも市販の乾電池が使える仕様も助かります。更にバックアップとして従前の有線マイクも残して使用できるようにして頂いています。Blu-rayプレイヤー等の機器も操作性の良いものを選択いただいたと思います。
今回の更新で3F観客席袖に操作ワゴンを設置しました。これによって、客席の音を直接確認しながら音響も照明も一人で操作できるようになりました。ここでは低音・高音の音質調整が出来ないのがひとつ残念でしたが、音響と照明が一箇所で操作できるメリットは、スタッフの負担軽減に大きく貢献しています。
歴史的建築物ゆえ構造上の制約がある中、予算内で課題を解決しながら求めるものが実現できました。(JKPI)と担当者の技術力と対応、ソリューション力に満足しています。
User's Profile
公益財団法人 興風会館
最大652人の客席を持つ大講堂や集会室、地下ギャラリーがあり、野田市内の文化、体育関係の事務局がおかれている。
1929年の竣工当時は、千葉県庁に次ぐ大建築であったといわれ、建築様式はロマネスクを加味した近世復興式のもの。設計者の大森茂氏は、神田駿河台の明治大学旧校舎を設計した人で、デザインの巧みな建築家として知られている。2001年に耐震構造に改築し竣工当時の外観を再現、1997年に国の『登録有形文化財』に登録されている。
HPアドレス:https://www.kouhoo1929.or.jp/
所在地:千葉県野田市野田250
取材日:2017年8月23日
ご対応:公益財団法人 興風会 圓崎 様